トロンボーン(読み)とろんぼーん(英語表記)trombone 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロンボーン」の意味・わかりやすい解説

トロンボーン
とろんぼーん
trombone 英語
trombone フランス語
trombone イタリア語
Posaune ドイツ語

リップリード(唇を発音源とする)の気鳴楽器の一つ。西洋音楽のいわゆる金管楽器に属し、トランペットと同様、管は円筒形を基本としている。現在一般に用いられているのは、管の一部をスライドさせることで管長を変え、それによって音高を変えることができるスライド式トロンボーンである。これは構造的には非常に単純で、外見上は長い1本の管を途中で2回折り返した形をしているが、実際には3本の管とそれをつなぐ2本のスライド管からなっている。スライド管のうち、歌口から奏者の前方に出ているものは、演奏中につねに動かして必要な音高を得るために用いられ、前方から折り返してきて奏者の肩の後方に位置するものは、楽器自体のピッチを微調整するために用いられる。実際の発音は、スライドをいちばん手前に引いた位置(第1ポジション)からスライドを伸ばして、順に半音ずつ低い第7ポジションまでの音を唇の調節による倍音の選択と組み合わせてなされる。このスライド管がトロンボーンの大きな特色で、これによってポルタメントなど他のいわゆる金管楽器には困難な演奏が可能となる。今日もっとも使用されるスライド式はテノール(B♭管)のタイプで、テノール・バス(通常B♭管、弁の操作でF管に切り替え可能)がこれに次ぐ。このほかにもソプラノ(B♭管)、アルト(E♭管)などがある。

 このスライド式のほか、トランペットのようにバルブ・ピストンを用いたバルブ・トロンボーンとよばれるものもある。19世紀後半にはドイツイタリアなどでよく用いられたが、音質があまりよくないため、今日ではほとんど用いられない。

[卜田隆嗣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロンボーン」の意味・わかりやすい解説

トロンボーン
trombone

楽器の一種。U字形のスライドを操作して数々の音高を得る低音用金管楽器。本来は,高音用も含まれていたが,今日では変ロのテノールとバスが一般化している。 15世紀に,大型のトランペットにスライドをつけたものが前身とされていて,イギリスではサックバットと呼ばれた。主として公的な儀式や教会音楽に用いられたが,スライドによって多くの音が出せるため,当時ではトランペットよりも用途が広く,16~17世紀には芸術音楽に加えられることが多かった。管弦楽で常用されるようになったのは,ベートーベン以降。

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