改訂新版 世界大百科事典 「土壌型」の意味・わかりやすい解説
土壌型 (どじょうけい)
genetic soil type
土壌を分類する場合の基本的な分類単位の名称。現在までのところ国際的に統一された土壌分類体系は未確立であり,分類単位の名称も国によってさまざまであるが,近代土壌学の父V.V.ドクチャーエフ以来の伝統をもつソ連の土壌分類体系においては,上位から下位へ向かう順に,土壌群,土壌綱,土壌亜綱,土壌型,土壌亜型,土壌属,土壌種,土壌変種,土壌品種の九つの分類単位(カテゴリー)が用いられている。これに対してアメリカ合衆国の土壌分類体系では,上位から下位に向かって,目,亜目,大群,亜群,科,統の六つの分類単位が用いられている。この二つの分類体系の分類単位の定義からみると,土壌型の概念はほぼ大群(アメリカの古い分類体系では大土壌群と呼ばれていた)のそれに相当する。
土壌型決定の5原則
土壌型は次のような五つの原則に基づいて決められる。(1)有機物の集積・変質・分解過程が同型であること。(2)無機物の分解と新たに生成された無機化合物および有機-無機複合体の合成との組合せが同型であること。(3)物質の移動と集積の特徴が同型であること。(4)土壌断面の構成が同型であること。(5)土壌肥沃度の増進・維持に対する手段が同じ方向であること。
土壌は,岩石(母材),気候,生物,地形,時間といった五つの土壌生成因子の相互作用によって地表面に生成される自然体である。そして,これらの土壌生成因子の質的な違いや作用する強度の違いによって,地表面にはさまざまな土壌が生成される。しかし,気候が変化すればそこに生育する動物や植物の種類が変化するといったように,すべての土壌生成因子は相互に密接な関連性をもっているため,自然界に生ずる土壌生成因子の組合せは決して無限ではなく,数は多いけれども有限な特定の組合せからなる自然地理的景観が存在し,そのような環境条件下で主要な土壌型が生成されるのである。ちなみに,ソ連の土壌分類体系ではソ連領土内に110の土壌型が確認されており,またアメリカ合衆国の土壌分類体系では,世界中の土壌が230の大群に細分されている。
世界の主要な土壌型
土壌はその成因と地理的分布の特徴によって成帯性土壌,成帯内性土壌,非成帯性土壌に3大別することができる。成帯性土壌zonal soilsは気候や生物(植生)の影響が強く現れた特徴をもち,気候帯や植生帯にほぼ一致した帯状分布,すなわち土壌帯soil zoneを形成している土壌であり,これに属する土壌型は気候土壌型とか植物土壌型などとよばれることもある。これに対して成帯内性土壌intrazonal soilsというのは,気候因子や生物因子の影響よりも母材・地形などの局所的因子の影響が強く反映されている土壌で,成帯性土壌の分布域内に島状に分布することが多い。また生成年代がきわめて新しいため,あるいは急峻な斜面でつねに浸食を受けているために土壌断面の発達がきわめて弱い土壌は非成帯性土壌azonal soilsといわれる。以下,世界中に分布する主要な土壌型を成帯性土壌型,成帯内性土壌型,非成帯性土壌型に大別して説明する。
成帯性土壌型
(1)極地および寒帯の土壌型 極地では,これまで一般に考えられていたように物理的風化作用だけが進行しているのではなく,生物の参加によって化学的風化作用が岩石の深部まで達していることが明らかになってきている。南極の氷床におおわれていない極地周氷河砂漠には,腐植を含まない,炭酸塩やセッコウなどの塩類の集積した,凍結乾燥した極寒砂漠土が存在する。極寒砂漠土が北極地方に分布するかどうかは不明である。カナダ北部やグリーンランド北部の極地の排水良好なデザート・ペーブメントdesert pavement(砂漠舗石)には地衣類・藻類・ケイ藻類に由来する土壌有機物を表層に6%ほど含んだ,炭酸塩の集積した,アルカリ性反応を示す極地砂漠土がみられる。月平均気温が0℃以上になる月が2~4ヵ月しかない寒帯のツンドラ気候下では,一般に降水量も少なく(年降水量250~300mm),地下に永久凍土層が存在する。北極ツンドラ地帯の山稜・エスカー・河岸段丘縁辺部・砂丘などの排水良好な砂礫(されき)地には,維管束植物の遺体からなる厚いマット状のA0層の下に,有機物を10%程度含むA1層,褐色で団粒構造の発達した植物根に富む酸性のA2層,黄色で単粒構造のA3C層,灰オリーブ色で中性~アルカリ性の石礫質のC層と続く層位配列をもった北極褐色土が生成している。しかし森林限界以北の北極ツンドラ帯に最も広く分布する土壌型はツンドラ・グライ土である。地衣類やコケ類からなる貧弱な植生のためA層の発達が悪く,夏季に融解する氷は下部に存在する永久凍土層によって排水が妨げられるためグライ化作用が進行する。またツンドラ・グライ土では凍結と融解による土層のかくらん現象(クリオタベーションcryoturbation)が活発なため泥炭の集積はあまり生じない。
(2)亜寒帯針葉樹林帯の土壌型 湿潤寒冷気候帯の北方針葉樹林(タイガ)に典型的に発達している土壌型はポドゾルである。ポドゾルの分布域の南部では,針葉樹林に広葉樹が混合し,下草が繁茂するようになるが,このようなところにはジョールン・ポドゾル性土が生成されている。日本でも北海道の台地・丘陵上にこの種の土壌型の分布が認められている。
(3)冷温帯の土壌型 湿潤冷温帯の落葉広葉樹林帯を特徴づけているのは褐色森林土である。褐色森林土では微生物や土壌動物の活発な働きによって,落葉は急速に分解されて無機物とよく混合されるので,細かい粒状構造が発達した肥沃な暗色の表土(A1層)が形成されている。A1層の下には酸化鉄で褐色に着色された層(B層)が続くが,酸化鉄は可動性を示さず溶脱層と集積層の分化がはっきりしていないのが特徴である。褐色森林土が分布する地帯の北(西ヨーロッパ)あるいは北東(北アメリカ)には,主にレス(黄土)を母材としてレシベ土が生成している。レシベ土は土壌中に浸透する雨水によって表層の細かい粘土が機械的に下方に移動して集積するため(このような作用はレシベ化作用といわれる),粘土の洗脱された明色のA3層と粘土が集積した濃褐色のBt層(アルジリック層)の分化が肉眼でも認められる。
冷温帯でも雨量の少ない大陸性乾燥気候下の多年生イネ科草本を主とする草原(ステップ)の代表的土壌型はチェルノーゼムである。ロシア平原からウクライナにかけて広く分布するこの土壌は,厚い黒色のA層が1m近くもあるきわめて養分に富んだ肥沃な土壌である。ステップよりやや雨量が多くなると,より丈の高い草本類からなる草原すなわちプレーリーが成立し,ここではチェルノーゼムと褐色森林土の中間的性質をもつブルニゼム(プレーリー土あるいはフェオゼムともいわれる)が生成している。ブルニゼムはチェルノーゼムによく似た土壌であるが,溶脱作用はいっそう進んでいるため炭酸カルシウムの集積層はない。ステップのチェルノーゼム地帯と亜寒帯針葉樹林のポドゾル地帯の中間には,樹木と草本類からなる森林ステップが分布しているが,このような植生下に灰色森林土が分布している。灰色森林土の性質はチェルノーゼムとポドゾルの中間的なもので,表層は酸性反応を示すが,下層は中性~弱アルカリ性反応を呈し,粘土の移動・集積(レシベ化作用)が認められる。カナダのアルバータやサスカチェワン地方に分布するGray Wooded soilは灰色森林土と厳密には同じではないが,きわめて類似した土壌である。チェルノーゼム帯の南方,ハネガヤ類・ウシノケグサ類・ヨモギ類などの短茎草本類からなる乾燥ステップ(年降水量250~300mm)には,熟したクリの実のような色をもち,地表近くから炭酸カルシウムやセッコウの集積がみられる栗色土が生成している。その南方の半砂漠(年降水量150~200mm)ではアルカリ性を呈する褐色半砂漠土に移り変わっている。
(4)暖(温)帯の土壌型 暖(温)帯に分布する主要な成帯性土壌型は,暖帯照葉樹林気候下の黄褐色森林土,地中海性気候帯の硬葉樹林下の地中海赤褐色土,半乾燥地中海性気候帯の乾性低木林下の肉桂(につけい)色土などである。
黄褐色森林土は,湿潤冷温帯の褐色森林土と湿潤亜熱帯の赤黄色土との中間に位置し,日本の西南部,中国の長江(揚子江)沿岸から南部,黒海沿岸などのシイやカシを主とする照葉樹林帯に分布している。断面形態は褐色森林土に類似しているが,有機物含量は褐色森林土より少なく,結晶化の進んだ遊離酸化鉄が多いため,下層は明るい黄褐色を呈する。地中海赤褐色土は,夏は乾燥し冬が湿潤な温暖気候(地中海性気候)帯の硬葉樹林(オリーブやコルクガシなどの常緑樹からなる)または乾性低木林(マキ)下の山地・丘陵・台地に発達している。有機物含量のやや高い表層の下に赤色または褐色を呈し,表層から移動した粘土が集積した下層が続いている。塩基に富んでおり反応は微酸性ないし中性である。B層(下層)が赤色のものを地中海赤色土(テラ・ロッサに相当する),褐色のものを地中海褐色土という。肉桂色土は,乾季と雨季が明りょうに区別される半乾燥地中海性気候の乾性低木林下に生成される土壌で,有機物含量は深さとともに漸減し,塩基で飽和され,断面下部に炭酸塩の集積層がある。クリミア半島南岸,ザカフカス東部,中央アジア山地などに分布している。
(5)亜熱帯・熱帯の土壌型 湿潤亜熱帯の常緑広葉樹林下に発達している土壌型は赤黄色土である。この土壌は腐植含量の低い薄い表層の下に,粘土含量の高いB層があり,塩基は強度に溶脱されていて強酸性を呈する。粘土の主成分はカオリン鉱物,Al-バーミキュライト,針鉄鉱,ギブサイトなどで,しばしば下層に霜降りロース状の網状斑(トラ斑とよばれる)が発達している。B層の色の差で赤色土と黄色土に分けられるが,両者の違いは局部的な内部排水の良否と母岩中の含鉄鉱物の質量の差によるもので,水分に富むか母岩に鉄分が少ない場合には黄色土ができると考えられている。なお西南日本の暖温帯地域に広く分布している赤色土は,過去の地質時代(更新世)の亜熱帯的気候条件下で生成した赤色土が残存した古土壌である。
年間を通じて高温・多湿な熱帯雨林気候帯ないし熱帯モンスーン気候帯に広く分布している成帯性土壌型はラテライト性赤色土である。この土壌はラトソル,フェラルソル,鉄アルミナ質土壌などともいわれ,アメリカの土壌分類体系ではオキシソル目に包含されている。熱帯の高温湿潤な環境条件下では風化されやすい鉱物はほとんど分解されてなくなり,石英のような風化に対する抵抗性の強い鉱物だけが残留する。塩基類はほとんど溶脱されてしまっているばかりでなくケイ酸までも溶脱されるため,土壌はほとんど酸化鉄やアルミナだけからなる赤色~黄色を呈し,下層にしばしばみられる赤白の網状斑を呈する部分(プリンサイト)は日光にあたって乾燥すると不可逆的に硬化してラテライトになる。アフリカ,南アメリカ,東南アジア,オーストラリアに広く分布している。熱帯でも年降水量が1000mmよりやや少なく,明りょうな乾季のある熱帯サバンナ(アフリカのスーダン,サハラなど)には熱帯鉄質土壌が分布している。この土壌は部分的に脱水された水和酸化鉄に富み,黄色または明黄褐色を呈する。酸化鉄は偽砂pseudo sandとよばれる小さな結核または硬化した集合体を形成している。塩基で飽和されているため反応は微酸性を示す。風化されやすい鉱物を含み,粘土はカオリナイトを主とするが少量のイライトも含まれている。熱帯の半砂漠地帯(アフリカのカラハリ砂漠の北部,中央オーストラリアなど)には赤褐色土が広く分布する。A1層は淡色または褐色を帯びた灰色,B層は赤褐色を呈する。反応は中性ないしアルカリ性で炭酸塩が集積している。赤色の色調を与える鉄の薄膜を含むのが通例である。乾燥亜熱帯の半砂漠地域(年降水量200~400mm)とくに中央アジアの砂漠の南部には灰色半砂漠土が分布する。この土壌はレスを母材とする場合が多く,表層から炭酸塩を含んでいるが,ほかの水溶性塩類はかなり深部に溶脱されている。土壌断面の発達は悪く,全体的に灰色を示す。
成帯内性土壌型(間帯土壌型)
(1)母岩(母材)の影響の強い成帯内性土壌型 岩石土壌型ともいわれる。レンジナは湿潤な森林植生下において,石灰岩や泥灰岩,苦灰岩のように炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを多量に含む岩石から生成された土壌で,腐植に富む黒色の厚いA層の直下に岩石の破片からなるC層があり,表層から炭酸塩を含む肥沃な土壌である。アメリカの分類体系ではレンドルとよばれている。これに対して普通のケイ酸塩岩石およびケイ質岩を母岩として生成したA-C断面の土壌,すなわち腐植に富む黒色の表層の直下に,岩石の破片からなるC層がくるような断面形態をもつ土壌はランカーとよばれる。黒ボク土の大部分は火山灰などの火山放出物を母材とする成帯内性土壌型で,亜寒帯南部から湿潤亜熱帯モンスーン地域の火山周辺に分布している。日本はとくに黒ボク土の分布が広く,火山灰土壌,腐植質アロフェン土などともよばれる。厚い黒色のA層の下に褐色を呈する粘土化の進んだ層(B層)をもち,きわめて多孔質で保水性が高いが,多量に含まれる活性のアルミニウムがリン酸と結合して難溶性塩となるため,農作物のリン酸欠乏症を発生しやすい。A層の厚さが薄く黒みの弱いものは淡色黒ボク土とよばれる。また東海・近畿地方に分布する火山放出物以外の母材に由来する類似の土壌は非火山性黒ボク土といわれている。
干拓地や熱帯・亜熱帯のマングローブ地域に広く分布する成帯内性土壌型として酸性硫酸塩土壌がある。パイライトFeS2を含む海底または湖底の堆積物から生成した土壌が乾陸化すると,FeS2が酸化されて遊離の硫酸が生じ強酸性(pH3)になる。このようにして生成した酸性硫酸塩土壌はジャロサイトKFe3(SO4)2(OH)6などの塩基性硫酸第二鉄化合物を含むためネコの糞のような黄色を呈するのでキャット・クレイともよばれる。
熱帯・亜熱帯の塩基性岩や石灰質岩からなる地域の微凹地にはバーティソル目に属する種々の土壌型が存在する。これらについては〈熱帯黒色土壌〉の項目を参照されたい。
泥炭のようにほとんど植物遺体からなる有機質の母材から生成した土壌型には,低位泥炭土,中間泥炭土,高位泥炭土などがある。低位泥炭土はヨシ,マコモ,ハンノキなどの遺体からなり,自然堤防や海岸砂丘の後背湿地や山地の低湿地などに生成している。低位泥炭土の表面がわずかに水面より上がるようになると植生が変化して,ワタスゲ,ヌマガヤなどの遺体を主とする中間泥炭土が生成するようになり,さらに底土からの距離が増大し貧栄養条件になると,雨水だけで繁殖ができるミズゴケ,ホロムイスゲなどの遺体からなる高位泥炭土が発達するようになる。泥炭土壌(主として低位泥炭土)に砂や粘土などの無機質母材が流入して混和されると泥炭の腐植化が進み,植物遺体の組織がもはや肉眼ではそれと認められないような比較的均質な黒色の腐植に富んだ土壌が形成されるが,これを黒泥土という。
(2)地下水のような水の影響を強く受けた成帯内性土壌型 地下水土壌型ともいわれる。グライ土は地下水位の高い排水不良な無機質土壌で,嫌気(還元)的条件下にあるため鉄が還元されて生じた2価鉄化合物によって土層全体が緑灰色を示す。母材が緻密(ちみつ)で透水性が悪い場合には,地下水位が低くても雪どけ水や降雨水が季節的に土層内に停滞するようなところには疑似グライ土が生成する。これは土層内で湿潤と乾燥が周期的に反復されるため,鉄が還元されてぬけて灰色になった部分と,酸化されて黄橙色になった部分とが作り出す大理石模様をもつのが特徴である。日本の北海道で重粘土とよばれているものはこの疑似グライ土である。停滞水の影響が一年中続いている場合には,下層土が弱いグライ化作用を受けて淡青灰,灰白,黄灰色などを呈する停滞水グライ土が生ずる。
(3)乾燥気候地域に分布する成帯内性土壌型 代表的なものは,ソロンチャク,ソロネッツ,ソロチである。ソロンチャクは塩類に富んだ地下水が毛管上昇して地表面から蒸発するときに,土壌内部や土壌表面に塩化物や硫酸塩などの可溶性塩類が集積してできた土壌で,おもにステップ,乾燥ステップ,半砂漠,砂漠地帯に形成されている。ソロンチャクの塩類が溶脱しはじめると,炭酸ナトリウムが生じアルカリ性(pH9~10)になって腐植が溶解するので,土層全体が黒色を呈するようになる。ナトリウムで飽和された粘土が多いため水を吸収して膨潤しやすいが,乾燥すると割れ目ができるために下層に円柱状構造が発達する。こうして生成したのがソロネッツである。ソロネッツがさらに洗脱作用をうけ,表層から粘土や交換性塩基,鉄やアルミニウムの酸化物などが減少し,白色薄片状の溶脱層が形成され,下方には粘土の集積層がみられるようになったものがソロチである。
非成帯性土壌型
岩屑(がんせつ)土は土壌生成の発達がきわめて弱いため,肉眼でかろうじて識別できる程度の腐植層しかない未熟な土壌である。ケイ酸塩質の固結した岩石に由来するものを固結岩屑土,砂丘砂,火山灰,レスなどの非固結の岩石に由来するものを非固結岩屑土という。
河川が上流地域の岩石や土壌を浸食し運搬してきた物質が,下流のはんらん原などに堆積してできた母材から生成する土壌は一般に沖積土壌といわれるが,これに含まれる土壌型には褐色低地土,灰色低地土などがある。褐色低地土は沖積平野の低位河岸段丘,扇状地,自然堤防,河床からやや離れた比較的安定な沖積面などの地下水位の低い排水のよい場所に分布している。礫(れき),砂,粘土などの新しい河成堆積物を母材とするため,A層の発達は必ずしも十分ではなく,土壌断面のほぼ全体が黄褐色ないし褐色を呈する。日本では畑,林地,水田などに利用されており,とくに古い水田では,灌漑水の作用によって土壌断面内に鮮明な斑紋や結核が認められることが多い。灰色低地土は,地下水位が季節的に大きく変動する場所に生成するもので,恒常的に地下水の影響を受けるグライ土にみられる青灰色の還元的層(グライ層)が消失し,そのかわり土壌断面全体にわたって管状,糸根状などをした鉄の斑紋を伴った灰色を呈するのが特徴的である。
→土壌
執筆者:永塚 鎮男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報