ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドナルドソン」の意味・わかりやすい解説
ドナルドソン
Donaldson, Simon Kirwan
イギリスの数学者。1979年,ケンブリッジ大学ペンブルック・カレッジ卒業後,1983年にオックスフォード大学ウースター・カレッジで博士号を取得。1983年から 1985年までオックスフォード大学オール・ソウルズ・カレッジで研究員を務めたのち,同大学セント・アンズ・カレッジで教授に就任。1997年にアメリカ合衆国のスタンフォード大学教授,そして 1999年にロンドン大学インペリアル・カレッジ教授となる。1986年,カリフォルニア州バークリーで開催された国際数学者会議で,位相幾何学(→トポロジー)に関する業績によりフィールズ賞を受賞。物理学におけるヤン=ミルズ方程式を 4次元多様体の幾何学に応用した。具体的には,4次元多様体上で,ヤン=ミルズ方程式の解のモジュライ空間を考えることにより,4次元多様体の幾何学的性質,特に交叉形式について著しい成果を得た。これは理論物理学に由来する方程式が純粋数学の問題に応用された一例でもある。ドナルドソンと同時にフィールズ賞を受賞したマイケル・フリードマンの成果と合わせて,4次元ユークリッド空間と位相同形でありながら微分同相ではない 4次元多様体の存在が示された。これは 4次元の幾何学に特有の現象である。ドナルドソンはその後,ヤン=ミルズ方程式とゲージ理論を用いた 4次元多様体の研究を発展させてドナルドソン不変量を定義した。
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