ゲージ理論(読み)げーじりろん(英語表記)gauge theory

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲージ理論」の意味・わかりやすい解説

ゲージ理論
げーじりろん
gauge theory

局所的な変換に対して不変な場の理論をいう。局所的な変換とは場所ごとに変換の角度が自由に選ばれた変換をいう。ゲージgaugeという学術語はワイルにより導入され、電磁相互作用ゲージ理論として認識した。この考えをヤン楊振寧)とミルズRobert L. Mills(1927―1999)は、任意の内部自由度(時空と独立な自由度)に対する対称性に拡張した。このため非可換群に基づいたゲージ理論はヤン‐ミルズ理論ともよばれる。ヤンとミルズの理論発表の直後に内山龍雄は、重力の理論である一般相対論も一種のゲージ理論であることを示した。今日知られている素粒子の相互作用の理論、すなわち電磁相互作用と弱い相互作用の統一理論であるワインバーグサラムの理論(WS理論)も、クォーク力学である量子色(いろ)力学(QCD)もすべてゲージ理論である。WS理論とQCDの大統一ゲージ理論が大きな関心をよんでいる。ゲージ理論は数学では接続の幾何学、すなわちファイバー・バンドルの理論に対応する。

益川敏英

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲージ理論」の意味・わかりやすい解説

ゲージ理論
ゲージりろん
gauge theory

ゲージ対称性をもつ場の理論をさす。すなわち四次元時空の各点 (座標 xyzt) において定義された場の量ψ (xyzt) を測るゲージを各点ごとに独立に変えても,エネルギーなどすべての物理量が不変であるような理論である。数学的にはψが群G (ゲージ群と呼ぶ) のある既約表現として局所的に変換したとき,場の満たす運動方程式が共変的に変換する。このためゲージ変換で結びつく解は物理的には同一内容をさす (ゲージ同値) とみなされる。この不変性を保証するため,隣り合った2点間のゲージを関係づけるゲージボソンと呼ばれるベクトル場が存在する。一例として,電子と電磁場の理論はG=U (1) (位相変換) のゲージ理論で,電子場がψ,光子がゲージボソンとなる。最近の素粒子理論では,基本的相互作用を記述する理論はすべてゲージ理論なので (ゲージ一元論) ,その重要性が注目されている。すなわち,電磁相互作用弱い相互作用を統一的に記述するワインバーグ=サラムの理論はG=SU (2) ×U (1) のゲージ理論であり,強い相互作用を記述する量子色力学 QCDはG=SU (3) のゲージ理論である。また重力相互作用を記述する一般相対性理論はGを局所ローレンツ変換群とするゲージ理論である。

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