翻訳|draft
プロスポーツの選手契約の規定。チームが入団契約の交渉権を獲得するための制度で、日本のプロ野球では新人選手選択制度ともいう。「ドラフト」は、本来は徴兵などの意味をもつ。アメリカのプロ野球のフリー・エージェント・ドラフト制度に由来するが、これはプロ・フットボール選手を抽選によって採用する制度に倣ったものである。契約金のつり上げや、人気のある有力球団に有望な新人選手が集中することを防ぐ制度で、日本も1965年(昭和40)にこの規定をプロ野球協約のなかの「新人選手の選択」(2001年9月に「新人選手の採用」に改正)の条章として制定した(2005年9月以降は、「新人選手選択会議規約」により制定)。同年秋より、新人選手と入団契約をするためには、11月にコミッショナーによって招集される新人選手選択会議(ドラフト会議)で、入札および抽選で指名権が決定されることとなった。
1978年、前年のクラウンライター(現、埼玉西武ライオンズ)の1位指名を拒否してアメリカに留学していた江川卓(すぐる)(1955― )が、協約上自由に契約できる日、いわゆる「空白の一日」に巨人との入団契約をかわし、社会問題となった。
その後、本来は入団テストの合格者が対象であったはずのドラフト指名を経由しない「ドラフト外選手」の入団が増加した。なかには大学進学を表明してドラフト指名を回避した後に、希望球団と契約する事例も目だち、1991年(平成3)指名枠を拡大する一方で、1993年にはドラフトで指名しなかった新人選手の入団を禁止した。同時に、大学進学や社会人入りを表明した選手の指名禁止の申合せも行われるようになった。
しかし、希望球団への入団がまったく認められないのは人権侵害である、という批判が根強く、1993年には大学生、社会人の1位、2位指名選手に限り、入団希望球団の逆指名を認めることとなった。
このように、運用の方法に関して改良を加えてきたが、人事の決定をくじ引きで行うのは人権無視との批判はぬぐえない。1998年には逆指名権をもたない高校生を、希望球団外にもかかわらず指名した球団のスカウトが自殺するという事件が起こった。2001年(平成13)からは逆指名制度を廃止して「自由獲得枠」制度を導入、1球団2名に限り自由競争による選手獲得を可能にしたが、2005年以降、新人選手選択会議は、高校生を対象とする選択会議と、大学生・社会人ほかを対象とする選択会議とに分けて行うこととなった。また、「自由獲得枠」は「希望入団枠」とされ、高校生を除く大学生・社会人ほかの新人選手を1球団1名に限り事前に獲得できることとしたが、この制度は2007年から廃止され、2008年からは高校生と大学・社会人がふたたび一本化された。
学生は、指名がなかったり、指名を拒否して社会人に進むと、高校生は3年間、大学生は2年間プロ入りができないという制度のため、プロ入りの機会がきわめて限定されていたが、2005年からは育成選手を指名する育成ドラフトが開始され、さらに同年誕生した独立リーグ四国アイランドリーグの所属選手は1年目から指名可能になるなど、プロ入りに至る多様性が確保されるようになった。
[森岡 浩 2020年6月23日]
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