改訂新版 世界大百科事典 「ドラフト制度」の意味・わかりやすい解説
ドラフト制度 (ドラフトせいど)
プロスポーツの選手に対し,チームが入団契約の交渉権を獲得するための制度の一つ。日本のプロ野球では〈新人選手選択規定〉という。毎年秋に東京でドラフトdraft会議が開かれ,全球団が出席して新人選手(これまで選手契約をしたことのないもの)の指名を行う。指名方法は,全球団が同時に選手を指名し,重複した場合に抽選を行う方式や,成績の下位の球団から順に獲得したい選手を1人ずつ指名していく方式(ウェーバー方式)などがあり,その併用も含めて何度も変更が繰り返されている。この制度は,契約金の際限ない高騰を防ぎ,各球団の戦力をできるだけ均衡化することを目的としたもので,日本では1965年に最初の会議が開かれている。アメリカでは下位リーグの選手を上位リーグの球団が契約する際の便法としてドラフト会議が早くから行われていたが,新人選手に対する制度として確立したのは1964年からである。また,プロのアメリカン・フットボールでも同様の制度を1936年から採用している。
ドラフト制は,契約中の選手を球団間でトレードする制度とともに,個人の自由意思を束縛するものとして,日本でもアメリカでもしばしば問題になっているが,77年にクラウンライター・ライオンズ(現,西武ライオンズ)にドラフト指名された法政大学の江川卓投手が入団を拒否,翌年のドラフト会議前日に巨人と契約した事件は多くの議論を呼んだ。その後,93年から2000年まで新人選手の選択意思を尊重し,大学生・社会人は自分のほうから球団を逆指名する方法が採用された。01年から04年までは〈自由獲得枠〉が設けられ,05年から〈希望入団枠〉となるなど,毎年のように指名方法に変更が加えられている。最大指名人数は,全体の合計が120名まで。
執筆者:菅谷 斉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報