日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナーランダー」の意味・わかりやすい解説
ナーランダー
なーらんだー
Nālandā
5世紀から12世紀にわたって北インドに栄えた有名な学問寺の跡で、中国では「那爛陀」と音写される。玄奘(げんじょう)が6年間をここで過ごした7世紀前期には、数千人に及ぶ学僧の集まる壮大な伽藍(がらん)であったという。インド東部、ビハール州パトナ市の南東約80キロメートルにあり、整備された2キロメートル四方の遺構には煉瓦(れんが)積みの五つの祠堂(しどう)、10の僧院址(し)が保存されている。当地では後(ポスト)グプタ期からパーラ時代(6~12世紀)にかけて造像活動が盛んで、遺跡に隣接する考古博物館には、出土した石造・青銅製の彫刻類、とくに密教系の尊像が数多く展示されている。石像は大部分が光沢のある黒い玄武岩が用いられ、チベットやネパール、あるいは東南アジアの仏教尊像の様式に、大きな影響を与えた。
[秋山光文]
2016年、「ビハール州ナーランダー・マハービハーラ(ナーランダー大学)の遺跡」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録された。
[編集部 2018年5月21日]