ニップール(読み)にっぷーる(英語表記)Nippur

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニップール」の意味・わかりやすい解説

ニップール
Nippur

バビロニアの古代都市。バビロン南東約 160km,ユーフラテス川チグリス川の両河川の中間の平原に発達した都市。現イラクのヌッファル。発掘により,前 4000年頃ウバイドの民が創設した,メソポタミア文明において最も古い都市の一つであることがわかった。シュメール人 (→シュメール ) の宗教および文化の中心として栄え,ウル第3王朝の初代の王ウル=ナンムによって守護神エンリル神殿が建設され,エンリル神は都市国家を越えて広く信仰された。パルティア帝国時代末期の3世紀頃までに衰退した。 1889年以来,アメリカ隊により発掘されたが,数万の粘土板が発見されており,それらは天地創造物語や大洪水についての物語を含む宗教,文学,科学,法律,文法に関する重要な史料である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニップール」の意味・わかりやすい解説

ニップール
にっぷーる
Nippur

イラク南部、ディワニヤの北東約30キロメートルにある都市遺跡。現在名はヌファル。19世紀末にアメリカの考古学者H・ヒルプレヒトHermann Hilprecht(1859―1925)らによる最初の調査が行われて以来、今日まで数回の調査が行われている。シュメールの最高神エンリルを祀(まつ)る宗教的中心都市として発達した。ウルク期からパルティア時代まで(前3500ころ~後226)の遺構が確認されているが、とくに初期王朝期からウル第3王朝期(前2060ころ~前1950ころ)のエンリル神殿とジッグラトの存在する神域(エクル)は広大な面積を占める。このほかに初期王朝期にはイナンナ神殿、北神殿なども建立されており、都市の宗教的性格を裏づけているが、その歴史を通じて政治的中心となることはなかった。またタブレットの丘からは多数の粘土板のほか、住居址(し)なども発見されている。

[山崎やよい]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android