メソポタミア南部の古代都市。現在名ヌファルNuffar。1889年より1900年までアメリカのペンシルベニア大学のJ.ピーターズらにより発掘された。第2次世界大戦後はシカゴ大学東洋学研究所とペンシルベニア大学の共同発掘,アメリカ東洋学研究学会の発掘を経て,1962年以後シカゴ大学隊により発掘が継続されている。古代シュメール地方の北部に位置し,前4千年紀後半のウルク期にはすでに都市的規模にまで発展していたらしい。シュメールの最高神エンリルの神殿エクルEkurが存在していたことから,シュメールの聖地として崇敬の対象とされ,前3千年紀の政治史のなかで特異な役割を果たした。また前2千年紀初頭のバビロン第1王朝時代に書かれた多数のシュメール文学に関する粘土板文書が出土している。バビロン第1王朝期後半に衰微するが,前1400年ころよりカッシート王朝下で再発展した。前5世紀中葉にはアケメネス朝ペルシアのもとで,ムラシュ一族が商取引によって大きく繁栄し,大量の粘土板文書を残している。パルティア時代にも繁栄は続き,後800年ころまで居住されていたらしい。
執筆者:前川 和也
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イラク南部、ディワニヤの北東約30キロメートルにある都市遺跡。現在名はヌファル。19世紀末にアメリカの考古学者H・ヒルプレヒトHermann Hilprecht(1859―1925)らによる最初の調査が行われて以来、今日まで数回の調査が行われている。シュメールの最高神エンリルを祀(まつ)る宗教的中心都市として発達した。ウルク期からパルティア時代まで(前3500ころ~後226)の遺構が確認されているが、とくに初期王朝期からウル第3王朝期(前2060ころ~前1950ころ)のエンリル神殿とジッグラトの存在する神域(エクル)は広大な面積を占める。このほかに初期王朝期にはイナンナ神殿、北神殿なども建立されており、都市の宗教的性格を裏づけているが、その歴史を通じて政治的中心となることはなかった。またタブレットの丘からは多数の粘土板のほか、住居址(し)なども発見されている。
[山崎やよい]
…元来シュメールの大気・嵐の神。その聖都ニップールがシュメール都市同盟の祭儀の中心となるに及んで,シュメールとアッカドの神々の王とみなされるようになった。シュメールには王権は都市から都市へ移行するという考え方があったが,天上の王権も同様に考えられた。…
…ただし南部ウバイド文化の故地は明らかではない。
[シュメール・アッカド時代]
前4千年紀中葉のウルク期には,シュメール北部にも多くの村落遺跡が見いだされ,ウルク期前半にすでにニップール,アダブなどがほぼ都市的規模の面積に達していた。後期には南部のウルクが大発展を遂げ,巨大な神殿などが相次いで成立し,ウルク最末期には最古のシュメール語粘土書板も現れている。…
※「ニップール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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