日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌシッチ」の意味・わかりやすい解説
ヌシッチ
ぬしっち
Branislav Nusić
(1864―1938)
ユーゴスラビア王国、セルビアの劇作家、小説家。ベオグラード大学で法学を修め、外交官、行政官となる。のちジャーナリズムの世界に転じ、またベオグラードその他の都市の国立劇場支配人の職を務める。23歳のときに書いた風刺詩『二人の奴隷』が筆禍事件を起こし、下獄したこともある。ゴーゴリの影響を受け、風刺のきいた喜劇を得意とした。主要な喜劇に『疑いぶかい性格』(1887)、『世界』(1906)、『大臣夫人』(1929)、『ミスター・ドル』(1932)、『喪中の家族』(1935)、『故人』(1937)などがあり、当時の社会の政治的、道徳的腐敗を痛烈に批判した。ユーモア小説『自叙伝』(1924)も秀作である。
[栗原成郎]