ハイアット(読み)はいあっと(英語表記)Alpheus Hyatt

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハイアット」の意味・わかりやすい解説

ハイアット
Hyatt, John Wesley

[生]1837.11.28. ニューヨーク,スターキー
[没]1920.5.10. ニュージャージー,ショートヒルズ
アメリカ合衆国の発明家,実業家。世界初の合成樹脂セルロイドの製造方法を発見した。青年時代は,イリノイ州およびニューヨーク州アルバニーで印刷工として働く。1863年にニューヨークのビリヤード用品製造会社が,象牙に代わるビリヤードの玉の素材を発明した者に 1万ドルの懸賞金を出すと発表した。ハイアットは何種類かの合成物で実験を行なったが成功しなかった。しかし,その過程で用いた木材パルプシェラック(→ラック)の合成物を原料として,型押し加工したチェッカードミノの牌を製造する事業を兄弟とともに始めた。実験を続けるうち,ニトロセルロース,ショウノウ(カンファー),アルコールを混練し,加熱プレスすると美しく実用性のあるプラスチック素材ができることを発見した。1870年にセルロイドという名称で特許を取得。1872年には,2人で設立したセルロイド・マニュファクチュアリングの拠点をアルバニーからニュージャージー州ニューアークに移し,数々の特許を取得して世界屈指のセルロイド製造企業を築き上げた。1880年代には,凝固剤とフィルタを用いた浄水処理法の特許を取得し,浄水処理装置を扱う会社を設立(→浄水処理)。その後も,ころ軸受やサトウキビ粉砕機,縫製機など,多数の産業用機器を発明した。

ハイアット
Hyatt, Alpheus

[生]1838.4.5. ワシントンD.C.
[没]1902.1.15. マサチューセッツ,ケンブリッジ
アメリカの古生物学者。化石頭足類の研究で知られる。ハーバード大学に学び (1858~62) ,L.アガシー師事。エセックス研究所所長 (67) を経て,マサチューセッツ工科大学の動物学および古生物学教授 (70~88) 。ボストン自然史学会会長 (81~1902) 。 1886年よりケンブリッジ比較動物学博物館館長。 67年にアメリカ合衆国における生物学の最初の学術雑誌『アメリカ博物学雑誌』 American Naturalistを創刊し,71年まで編集責任者であった。また博物学会の創設においても中心的な役割を果し,83年初代会長となる。マサチューセッツ州アニスクオムに海洋生物学研究所を設立するが,これはのちにウッズホールに移転され,そこから数々の重要な研究が生れることになる。古生物学者としては,頭足類の化石を研究してその進化史の解明に寄与した。彼は獲得形質が遺伝すると主張し,オウムガイの化石の比較研究によりその立証を試みた。ネオラマルキズムの一人と目される。主著『獲得形質の系統発生学』 Phylogeny of an Acquired Characteristic (1894) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイアット」の意味・わかりやすい解説

ハイアット(John Wesley Hyatt)
はいあっと
John Wesley Hyatt
(1837―1920)

アメリカの発明家。ニューヨーク州スターキー生まれ。16歳から捺染(なっせん)工として働き、のちに独立して捺染工場を経営、その一方で発明を行った。もっとも有名な発明は、1868年に弟のアイザックIsaac Smith Hyattとともに発明した「セルロイド」の製法である(特許取得は1870年)。ニトロセルロースを樟脳(しょうのう)で可塑的にしたものはパークスによって1861年に発明されていたが、ハイアットはこれを固形物の製造に用い、「セルロイド」の商品名で登録した。1892年にはボールベアリングを発明、製造工場をハリソンに設立した。水浄化器などの発明もある。化学工業に関する功績でパーキン賞を受賞(1914)。

[山崎俊雄]


ハイアット(Alpheus Hyatt)
はいあっと
Alpheus Hyatt
(1838―1902)

アメリカの古生物学者。ワシントンに生まれる。ハーバード大学を卒業。マサチューセッツ工科大学動物学・古生物学教授(1870)、ボストン大学生物学教授(1887~1902)などを歴任した。頭足類化石の分類体系を確立し、進化についての研究を行い、反復説(生物発生原則)の立場にたった。とくに中生代ジュラ紀のアンモナイトの属種を樹立し、また頭足類殻の初期の部屋を調べることによりオウムガイ目(もく)とアンモナイト目の初期発生の違いを明らかにした。ツィッテルの『古生物学便覧』中の頭足類を執筆(1900)している。

[小畠郁生]

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