ニトロセルロース(その他表記)nitrocellulose

デジタル大辞泉 「ニトロセルロース」の意味・読み・例文・類語

ニトロセルロース(nitrocellulose)

セルロース硝酸エステル。セルロースを硝酸硫酸・水の混合物で処理してつくる。硝酸度の多いものは無煙火薬などに、少ないものはラッカーフィルムセルロイドなどの原料硝酸セルロース硝酸繊維素硝化綿

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精選版 日本国語大辞典 「ニトロセルロース」の意味・読み・例文・類語

ニトロ‐セルロース

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] nitrocellulose ) セルロースの硝酸エステル。セルロースを硫酸・硝酸・水から成る混酸で処理してつくる。混酸の組成により種々のエステル化度のものがつくられ、性質も異なる。一般に窒素量九・〇~一三パーセントの範囲のものが用いられ、窒素量の多い順に強綿薬・ピロ綿薬・弱綿薬・セルロイドなどに分類される。乾燥状態では発火爆発しやすいが、水分二〇パーセント以上を含むと発火しない。セルロイド・ラッカー・無煙火薬などの製造原料に用いられる。硝酸セルロース。硝酸繊維素。硝化綿。

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改訂新版 世界大百科事典 「ニトロセルロース」の意味・わかりやすい解説

ニトロセルロース
nitrocellulose

硝酸繊維素,硝化綿ともいい,セルロースの硝酸エステルである。セルロース誘導体では最も早く1833年に合成された。綿火薬として実用化され,60年代にニトロセルロースの精製安定法が見つかり,無煙火薬の製造につながった。68年J.W.ハイアットはニトロセルロースにショウノウを混合することによって,初めて合成樹脂すなわちセルロイドをつくった。ニトロセルロースから繊維をつくる研究は80年代にいくつか行われ,C.H.B.deシャルドンネの絹はかなりの量で生産された最初の人造絹糸である。この製法では,燃えやすいニトロセルロースは紡糸後に脱ニトロ化され,再生セルロースへ変えられて安全に使用された。

 現在,ニトロセルロースは世界の数ヵ国で工業的に生産されている。最大の用途はラッカー塗料であり,続いて火薬,推進剤である。ニトロセルロースはフィルム強度が高く溶媒の速乾性に優れており,また,可塑剤樹脂顔料などの添加で改質することができる。セルロイドは眼鏡フレーム,装飾板,玩具などに使われている。

 ニトロセルロースは木材パルプコットンリンター(C6H7O2OH3nを硝酸と硫酸の混合物でニトロ化してつくられる。水酸基-OHが全部ニトロ化されると14.14%窒素を含有するはずであるが,工業的に製造されているのは,ラッカー塗料に使用される平均12%の窒素を含有するもの,11.5%窒素含有のもの,およびフレキソ印刷インキや紙の熱密封ラッカーに使われる11%窒素含有のニトロセルロースである。
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百科事典マイペディア 「ニトロセルロース」の意味・わかりやすい解説

ニトロセルロース

硝酸繊維素,硝化綿とも。セルロースを硝酸と硫酸との混酸で処理して得られるセルロースの硝酸エステル。白色または淡黄色の綿状物質で,着火すると激しく燃焼する。セルロースを構成するグルコース1単位分子あたり3ヵ所で硝酸エステル化可能だが,さまざまな程度に硝化されたものが得られ,窒素含有量で区別する。最大の用途はラッカー塗料。続いて火薬,推進剤。ニトロセルロースはフィルム強度が高く溶媒の速乾性に優れており,また,可塑剤,樹脂,顔料などの添加で改質することができる。ショウノウと混合してつくられたセルロイドは世界最初の合成樹脂である。
→関連項目火薬コロジオン炸薬硝酸エステルダイナマイトダブルベース推進剤綿薬ラッカー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニトロセルロース」の意味・わかりやすい解説

ニトロセルロース
にとろせるろーす
nitrocellulose

セルロースエステルの一つ。一般的には硝酸繊維素、硝酸セルロースといわれているが、塗料、セルロイドあるいはコロジオン用の場合には硝化綿、火薬・爆薬用の場合には綿薬または綿火薬とよばれてきた。

 精製乾燥したセルロースを、硝酸、硫酸、水の3成分からなる混酸に常温付近において浸して得られる。混酸の組成により種々の窒素量のニトロセルロースが得られ、窒素量によって強綿薬、弱綿薬および脆綿(ぜいめん)薬に分けられる。理論的にはセルロースの単位構造当り3個の硝酸基が入り、窒素量14.14%となりうるが、実際には14%以上の製品を得ることはむずかしい。強綿薬は無煙火薬、弱綿薬はダイナマイト、ラッカー、人工レザー、脆綿薬はセルロイドの原料として用いられる。

[吉田忠雄・伊達新吾]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニトロセルロース」の意味・わかりやすい解説

ニトロセルロース
nitrocellulose

硝酸セルロース,硝酸繊維素,硝化綿などの呼称もある。セルロースの硝酸エステルで,180℃付近で発火し激しく燃える。セルロースを濃硫酸,濃硝酸,水の混液で処理してつくる。条件によって,セルロースの基本単位中にある3個の水酸基がニトロ化される程度が異なる。ほとんど全部ニトロ化されたものは綿火薬として,以前は火薬の原料として使用されたが,現在は他の強力な火薬に置き換えられている。ニトロ化の程度の少いものは,セルロイド,ラッカーなどに用いられている。乾燥状態で扱うと爆発しやすいので,20%以上の水分を含ませて保存する。

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化学辞典 第2版 「ニトロセルロース」の解説

ニトロセルロース
ニトロセルロース
nitorocellulose

[別用語参照]硝酸セルロースセルロースセルロース誘導体

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世界大百科事典(旧版)内のニトロセルロースの言及

【化学繊維】より

…綿のような安価なセルロース系天然繊維から高級な絹に似た人工繊維(人造絹糸,略して人絹ともいう)を作ろうという努力が始まった。ニトロセルロースがフランスのブラコネH.Braconnetによって1832年セルロースと硝酸から合成されたので,スイスのC.F.シェーンバインが46年にこれをエーテルとアルコールに溶かして糸に引いたのが始まりである。85年にC.H.B.deシャルドンネはニトロセルロースを紡糸後に脱ニトロ化してシャルドンネの絹と呼ばれる最初の実用になるレーヨンを作り,一時期広く使用された。…

※「ニトロセルロース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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