ニトロセルロース(読み)にとろせるろーす(英語表記)nitrocellulose

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニトロセルロース」の意味・わかりやすい解説

ニトロセルロース
にとろせるろーす
nitrocellulose

セルロースエステルの一つ。一般的には硝酸繊維素硝酸セルロースといわれているが、塗料セルロイドあるいはコロジオン用の場合には硝化綿火薬・爆薬用の場合には綿薬または綿火薬とよばれてきた。

 精製乾燥したセルロースを、硝酸硫酸、水の3成分からなる混酸に常温付近において浸して得られる。混酸の組成により種々の窒素量のニトロセルロースが得られ、窒素量によって強綿薬、弱綿薬および脆綿(ぜいめん)薬に分けられる。理論的にはセルロースの単位構造当り3個の硝酸基が入り、窒素量14.14%となりうるが、実際には14%以上の製品を得ることはむずかしい。強綿薬は無煙火薬、弱綿薬はダイナマイトラッカー、人工レザー、脆綿薬はセルロイドの原料として用いられる。

吉田忠雄・伊達新吾]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニトロセルロース」の意味・わかりやすい解説

ニトロセルロース
nitrocellulose

硝酸セルロース,硝酸繊維素,硝化綿などの呼称もある。セルロースの硝酸エステルで,180℃付近で発火し激しく燃える。セルロースを濃硫酸,濃硝酸,水の混液で処理してつくる。条件によって,セルロースの基本単位中にある3個の水酸基ニトロ化される程度が異なる。ほとんど全部ニトロ化されたものは綿火薬として,以前は火薬の原料として使用されたが,現在は他の強力な火薬に置き換えられている。ニトロ化の程度の少いものは,セルロイド,ラッカーなどに用いられている。乾燥状態で扱うと爆発しやすいので,20%以上の水分を含ませて保存する。

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