ハウスドルフ(読み)はうすどるふ(英語表記)Felix Hausdorff

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハウスドルフ」の意味・わかりやすい解説

ハウスドルフ
はうすどるふ
Felix Hausdorff
(1868―1942)

ドイツの数学者。ブレスラウに生まれ、ライプツィヒ大学に学んだ。1902年母校の教授となり、その後ボン大学の解析学教授。「ハウスドルフ測度」「ハウスドルフのモーメント問題」などで知られるが、なかでも有名なのは集合論位相空間論の体系化であり、『Grundzüge der Mengenlehre』(1914)は第二次世界大戦前のもっとも標準的な教科書であり、とくに距離空間についての詳細な結果が含まれている。位相空間の定式化はいろいろあるが、ハウスドルフの定式化は、距離空間に便利な近傍概念によるものである。そして、近傍による分離公理の成立する空間は、「ハウスドルフ空間」とよばれている。いまでも、位相空間論の入門は、ハウスドルフ流の距離空間の近傍から入ることが多い。

[森 毅]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハウスドルフ」の意味・わかりやすい解説

ハウスドルフ
Hausdorff, Felix

[生]1868.11.8. ブレスラウ(現ポーランド,ウロツワフ)
[没]1942.1.26. ボン
ドイツの数学者。ユダヤ人の商人の家に生れる。ライプチヒ中等教育を終えたあと,ライプチヒ,フライブルクベルリンの各大学で数学,天文学を学ぶ。 1891年,ライプチヒ大学学位を取り,ライプチヒ大学私講師 (1896) ,同助教授 (1902) 。ボン大学助教授 (10) 。グライフスワルド大学教授 (13) 。ボン大学教授 (21) 。数学以外の自然科学,哲学,文学にも関心をもっており,天文学,光学,哲学,文学の本や論文を書く。 1902年頃から次第に集合論の研究に集中。 14年『集合論の基礎』を出版。この本は分離公理を導入し,「近傍」によって位相空間を定式化したもので,長い間,集合論,位相空間論の標準的テキストとされていた。このなかで,「位相空間」という言葉を初めて使った。ナチスが政権をとるに及んで,35年公職を追放され,41年には一時的に免れることのできた収容所送りが,再度切迫した翌 42年,妻,妻の妹とともに自殺した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android