日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハクビシン」の意味・わかりやすい解説
ハクビシン
はくびしん / 白鼻心
masked palm civet
[学] Paguma larvata
哺乳(ほにゅう)綱食肉目ジャコウネコ科の動物。中国南部、チベット、インド、マレー半島、ボルネオ島、スマトラ島、海南島、台湾などに生息する。日本では、四国四県、静岡、山梨、長野、愛知、神奈川、東京、茨城、福島、山形、宮城などの各都県に生息し、とくに静岡県や四国では、果樹や農作物を食害することがある。頭胴長は50~70センチメートル、尾は細長く30~50センチメートル、体重は3~5キログラム。体色は一般に灰茶色であるが、頭部、四肢の先、尾は黒い。額から鼻すじにかけて白帯があるほか、両目の下、耳の根元などにも白斑(はくはん)がある。
日本では、平地や山地の林、果樹園や畑地の周辺などに、単独か数頭の小集団をつくってすむ。冬期には、一つの穴に十数頭が集まって越冬することもあるらしい。日中は岩穴や樹洞などで過ごし、夜間活動する。雑食性で、ネズミ、昆虫、カニなどから果実、木の葉や茎などを食べる。繁殖は、春秋の年2回、1産3、4子と思われる。また本種は、日本に昔からいたものか、人が持ち込み飼育していたものが逃走し野生化したものか、議論の分かれている動物である。
[古屋義男]