ハナイカリ(読み)はないかり

改訂新版 世界大百科事典 「ハナイカリ」の意味・わかりやすい解説

ハナイカリ (花碇)
spurred gentian
Halenia corniculata (L.) Cornaz

リンドウ科の一・二年草。淡黄色の碇形の花をつけることで,他のリンドウ科植物と異なる。全体平滑で,高さ10~60cm。茎は四稜形で,単一または分枝する。根出葉は花時にもあり,対生またはややロゼット状。茎葉は対生で,披針形から楕円状卵形,長さ2~6cm,幅1~2.5cm,3~5脈あり,短柄があるかまたは無柄。7~9月に,花を茎および枝の先端と葉腋(ようえき)につける。萼は4深裂し,裂片は線状倒披針形。花冠は長さ6~10mmで4深裂し,裂片は楕円状卵形で基部近くの外側に距がある。果実は蒴果(さくか),種子は楕円形で平滑。日本全土の日当りのよい草地に生育し,サハリン千島列島シベリアカムチャツカ,中国からヨーロッパの東端まで広く分布する。植物体には,ゲンチアニンgentianineのほかにキサントンxanthone類(1-ヒドロキシ-2,3,4,5-テトラメトキシキサントンほか)を含み,漢方では解熱・解毒剤とする。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハナイカリ」の意味・わかりやすい解説

ハナイカリ
はないかり / 花錨
[学] Halenia corniculata (L.) Cornaz

リンドウ科(APG分類:リンドウ科)の越年草。茎は高さ10~60センチメートル、高山生のものは丈が低い。葉は長楕円(ちょうだえん)状卵形から披針(ひしん)形で、3~5本の脈がある。8~9月、茎の上部に淡黄色花を開く。花冠は中ほどまで4裂し、基部に細長い距(きょ)がある。山地帯から高山帯の林縁の草地や風衝草原に生え、北海道から九州、および朝鮮半島、カムチャツカ、シベリアからヨーロッパ東部に広く分布する。名は、花の形が錨(いかり)に似るのでいう。

 ハナイカリ属は、花は4数性で花冠に距がある。アジア、アメリカ、南アフリカに約80種、日本には本種のみ分布する。

[高橋秀男 2021年5月21日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハナイカリ」の意味・わかりやすい解説

ハナイカリ(花碇)
ハナイカリ
Halenia corniculata; spurred gentian

リンドウ科の越年草で,アジア,ヨーロッパの温帯に広い分布をもつ。山地の陽地に自生する。茎は直立して4稜線があり,高さ 10~60cmに達する。葉は対生し長さ2~6cmの長楕円形で柄はない。8~9月,葉腋から短い花柄を伸ばし,淡黄緑色の多数の花をつける。萼は緑色で4片に分れ,裂片は線形をしている。花冠は4深裂し,長さ6~10mmで裂片の基部に長さ3~7mmの距がある。花後に長さ 1cm弱の披針形の 蒴果ができる。和名四方に開出する4個の長い距を碇 (いかり) に見立てたものである。

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百科事典マイペディア 「ハナイカリ」の意味・わかりやすい解説

ハナイカリ

リンドウ科の一〜二年草。北海道〜九州,東アジアの日当りのよい高原や湿原にはえる。茎は高さ10〜60cm,葉は対生し,長卵形で,長さ2〜6cm。8〜9月,葉腋に数個の淡黄色の花を開く。花冠は長さ6〜10mm,4裂し,各裂片の基部には長い距があって,船のいかりに似る。

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