日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハリーリー」の意味・わかりやすい解説
ハリーリー
はりーりー
Abū Muammad al-arīrī
(1054―1122)
中世イラクの物語作者。南イラクのバスラ近郊マシャーンで生まれる。バスラの学校で教育を受け、カリフ庁で書記の職についた。のち文学に専念して、マカーマ形式の有韻散文による物語集『マカーマート』maqāmāt50編を発表するに及び、一躍名をなした。各編に共通の主人公であるサルージュのアブー・ザイドが登場し、その逸話をハンマームの息子ハーリスが聞いた話として語るという形式をとっている。主人公は人をからかったり機知をもって楽しませる道化であり、また、しばしば詩歌が配されていて一種の歌物語をなしている。彼より約半世紀以前のマカーマ作者、ハマザーニーの影響が色濃い。その作品は名文といわれ、長期間にわたって学校の教材とされてきた。
[矢島文夫]