翻訳|soft landing
月・惑星探査機や宇宙船が,搭載機器や人間の耐えられるような低相対速度で目的の天体に着陸すること。軟着陸することによって,その過程での近接撮影や気象観測をはじめ生物探査実験などさまざまな天体上での活動が可能になり,多くの情報を得ることができるようになった。軟着陸の方法は,着陸する天体の条件によって異なったものとなる。例えば,月では大気がないためにロケットエンジンを月面に向けて逆噴射することだけで減速しなければならない。もし,質量が大きく重力の大きい天体に逆噴射だけで軟着陸するとすれば,推力の大きなロケットエンジンが必要となるため軟着陸はむずかしくなる。しかし,月のように小さな天体の場合には小さいロケットエンジンで十分である。アポロの月着陸船もこうして軟着陸している。一方,火星のように大気のある天体では大気を利用することができる。1975年に打ち上げられたアメリカのバイキング1号と2号は,まず火星の大気で減速し,次にパラシュートを開き,さらに着陸の直前にロケットを逆噴射させて軟着陸している。
月への軟着陸に初めて成功したのはソ連(現ロシア)のルナ9号(1966)で,月面の近接撮影をしている。アメリカも同年にサーベイヤー1号で月に軟着陸し,カラー写真を撮影した。またソ連は,1970年にベネラ(金星)7号で金星に,翌年マルス(火星)3号で火星にそれぞれ軟着陸に成功している。
執筆者:松尾 弘毅
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