バカン(読み)バカン[はくけ](英語表記)Sir John Buchan

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バカン」の意味・わかりやすい解説

バカン(伯家)
バカン[はくけ]
Buchan, Earls of

スコットランド貴族家柄。数回とだえては創設された。初めは 13世紀にカミン家に与えられ,2代伯アレクサンダー (1289没) はガロウェー地方に大所領を獲得し,スコットランド総帥になった。その子の3代伯ジョン (1313頃没) もスコットランド総帥になったが,イングランド王エドワード1世に忠誠を尽し,1297年愛国者 W.ウォレスの反乱鎮圧にあたり,1305年エドワードをスコットランド王として認めた。カミン家と犬猿の仲にあったブルース家のロバート (のちのロバート1世ブルース ) が,06年従兄弟のジョン (カミン) を殺害するとその復讐を誓い,翌年からスコットランド王となったロバートと戦って敗れ,土地を没収された。 82年頃ロバート2世の子アレクサンダー・スチュアート (43頃~1405頃) があらためてバカン伯になったが,彼一代で終った。 1406年に伯爵位は一族のジョン・スチュアート (1381頃~1424) に3回目の初代伯として授けられた。彼は百年戦争中,スコットランド軍を率いてフランス軍救援におもむき,たびたびイングランド軍を破ってフランス元帥に叙せられたが,最後にベルヌイユで戦死した。その後,16世紀にアースキン家が4回目のバカン伯家を興した。その 11代伯デービッド・スチュアート (1742~1829) は,スコットランド古遺物協会の設立者で,その他の文化事業の後援者でもあったが,また 1792年アメリカ大統領 G.ワシントンに,かつて愛国者ウォレスの身を守ったと伝えられる木でつくった嗅ぎたばこ入れを贈ったことでも知られる。

バカン
Buchan, John, 1st Baron Tweedsmuir

[生]1875.8.26. パース
[没]1940.2.11. モントリオール
イギリス作家,政治家。法律を学んで,アフリカの植民地統治にあたり,1917年には情報活動の責任者となった。その体験に基づいて冒険物語を数多く執筆。代表作はスパイスリラー『三十九階段』 Thirty-Nine Steps (1915) ,『緑のマント』 Greenmantle (16) 。ほかに W.スコットの伝記,第1次世界大戦史など。 35年カナダ総督となり,男爵に叙せられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バカン」の意味・わかりやすい解説

バカン
ばかん
Sir John Buchan
(1875―1940)

イギリスの政治家、著述家。スパイ冒険小説『三十九階段』で有名。出版社社長、従軍記者、情報部員と波瀾(はらん)に富む生活を送り、1927年にはスコットランドの議員、35年から亡くなるまでカナダ総督を務めた。1915年に著した『三十九階段』は、スパイ冒険小説の走りともいうべき作品で、彼の多彩な経験が生かされ、英雄的スパイ、リチャード・ハネーを創造した。スリルに満ちた筋立てを得意とし、作者自身はこれを「ショッカー」とよんで、同じ主人公の作品をその後もいくつか発表した。『三十九階段』は35年にアルフレッド・ヒッチコック監督で映画化(邦題『三十九夜』)されてヒットし、60年および78年にも再映画化された。

[梶 龍雄]

『小西宏訳『三十九階段』(創元推理文庫)』

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