日本大百科全書(ニッポニカ) 「バストネス石」の意味・わかりやすい解説
バストネス石
ばすとねすせき
bastnäsite-(Ce)
セリウムの鉱石鉱物の一つ。セリウム族希土類を主成分とするフッ素炭酸塩鉱物。希土類元素のほか、アルカリ、アルカリ土類元素を主成分とする炭酸塩鉱物は50種を超え、それらのなかには多型polytype(層状の単位に分割した場合の原子配列の積み重なり方が異なる相)をもつものも多い。バストネス石は炭酸塩鉱物としては緻密(ちみつ)な原子配列をもち、異常に大きい比重(>5)を与える。日本では福島県で花崗(かこう)岩質ペグマタイト中に既存のセリウム鉱物の分解物として粉末状のものを産する。世界的にはカーボナタイト(火成起源の炭酸塩岩)中のものが有名で、モンゴルのベイユン・オボBaiyun Obo、アメリカのコロラド州パイクス・ピークPikes Peak地域などでは鉱床を構成する。命名は原産地スウェーデンのバストネスBastnäsにちなむ。セリウム以外にランタン(La)やイットリウム(Y)をもっとも多く含むものや本鉱のOH置換体もある。
[加藤 昭]