日本大百科全書(ニッポニカ) 「バットレスダム」の意味・わかりやすい解説
バットレスダム
ばっとれすだむ
buttress dam
遮水版を扶壁(ふへき)(バットレス)で支え、水をせき止める構造のダム。バットレスダムには、遮水版が平版(スラブ)であるフラットスラブバットレスダム(あるいはバットレスダム)と、複数のアーチになっているマルチプルアーチダムがある。バットレスダムは以前は石でつくられた。19世紀末にダムの建設材料としてコンクリートが使われるようになったが、コンクリートの使用量を少なくするために、20世紀初頭に鉄筋コンクリートを使う近代的なバットレスダム、マルチプルアーチダムがアメリカ合衆国で考案された。2011年版ダム年鑑(日本ダム協会)によると、日本にはバットレスダムは6、マルチプルアーチダムは3ある。日本のバットレスダムには耐震性を高めるために扶壁と扶壁の間に水平支材が入れられている。日本最初のバットレスダムは1923年(大正12)に竣工した函館市亀田川水系笹流(ささながれ)川の笹流ダム(高さ25.3メートル)で、もっとも高いのは丸沼ダム(群馬県利根川水系片品川、高さ32.1メートル、1931年竣工)である。日本最初のマルチプルアーチダムは1930年に竣工した香川県柞田(くにた)川水系田野口川の石造りの豊稔池ダム(高さ30.4メートル)で、もっとも高いのは大倉ダム(宮城県名取川水系大倉川、高さ82メートル、1961年竣工)である。世界でもっとも高いバットレスダムは1991年にブラジルとパラガイの国境を流れるパラナ川につくられた中空重力ダム、バットレスダム、ロックフィルダム、アースダムの異なるタイプの四つのダムで構成されているイタイプダムのバットレスダムで、高さは196メートルである。世界でもっとも高いマルチプルアーチダムは高さ214メートルのカナダのダニエル‐ジョンソンダム(1968年竣工)である。
[鮏川 登]