19世紀にイランで生まれた、イスラム・シーア派に起源をもつ新宗教。1844年にミルザー・アリー・ムハンマド(称号「バーブ」。「門」の意)の創始した新宗教バーブ教は、社会改革を唱え、急速にイラン全土に広まったが、戦闘的メシア主義の性格が強かったために、カージャール朝権力によって徹底的に弾圧され、バーブも1850年に異端として処刑された。彼の代表的な著作には『バヤーン』がある。バーブの死後、バーブ教徒の事実上の指導者となったミルザー・フサイン・アリー(称号「バハー・アッラー」。「神の光輝」の意)は1863年に、追放先のバグダード郊外で、自らを、バーブがその到来を預言した「神が顕(あら)わし給う者」であると宣言し、新宗教を開始した。バーブをバハー・アッラーの「先駆者」とみなし、2人とも「神の顕示者」(イスラム教の預言者にあたる)と認めるこの新しい教えは、バーブ教徒の大部分に受け入れられたが、ムハンマド(マホメット)を最後の預言者と考えるイスラム教では異端として攻撃された。バハー・アッラーには『キターブ・アクダス』など数多くの著作があり、聖典として認められている。彼は、オスマン・トルコ政府による監禁状態のなか、パレスチナで没したが、その後、後継者となった、彼の長男アブドゥル・バハーは、欧米に熱心に布教活動を行い、国際的宗教となる基礎を築いた。それとともに、イラン的、イスラム的性格はしだいに薄れ、全人類の平和と統一を説くコスモポリタンな宗教となった。人類の一体性とすべての宗教の融合統一を唱え、科学と宗教の一致、世界平和の達成を目ざしている。
儀礼面では、1か月が19日、1年が19か月からなるバハーイ暦に従って、毎月1回、礼拝の集会をもつ。バハーイ暦19月(3月2~20日)は断食月で、イスラム教のラマダーン月のように、日中(日の出から日没まで)断食をする。またイスラム教と同じように、アルコール類は禁止されている。
現在、バハーイ教徒は世界に約300万人いるといわれ、おもにインド、イラン、アメリカ、西ヨーロッパなどに分布している。ただし、イランなどのイスラム教国ではバハーイ教は独立した宗教として認められてはいない。最高機関として、イスラエルのハイファに「万国正義院」があり、その下に、国単位で全国精神行政会、その下に地方精神行政会が置かれている。これらの運営機関のメンバーは信徒間で選出され、僧侶(そうりょ)階級はない。
[竹下政孝]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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