日本大百科全書(ニッポニカ) 「バルバロイ」の意味・わかりやすい解説
バルバロイ
ばるばろい
barbaroi ギリシア語
古代ギリシア人(ヘレネスHellenes)が用いた異民族の呼称。「野蛮人」を意味する英語のバーバリアンbarbarianの語源。ヘレネスにとってわけのわからない異民族のことばの響きに基づくとされ、ホメロス以来用いられた。初めは偏見を含まなかったが、紀元前6世紀後半から、この呼称はとくにペルシア帝国治下の東方の民をいうようになり、ヘレネスとの対比が強く意識されるようになった。ペルシア戦争後の前5~前4世紀には、野蛮、粗野、卑怯(ひきょう)で、本来ヘレネスに隷従すべき民族をさすとの観念が一般化した。他方、両者に元来差はないとの人類平等の思想も前5世紀以来あり、ヘレニズム時代の世界市民主義はその傾向を強めた。
[清永昭次]