日本大百科全書(ニッポニカ) 「バレンチン鉱」の意味・わかりやすい解説
バレンチン鉱
ばれんちんこう
valentinite
アンチモンの三二酸化物。白安華(はくあんか)、バレンチン石のような和名もある。方安華senarmontite(化学式Sb2O3)と同質異像関係にある。同系鉱物なし。自形はc軸方向に伸び、b軸方向に扁平(へんぺい)な斜方板状。尖端(せんたん)が鈍角であるがとがる。またa軸方向にやや扁平な横長の六角形の断面をもつ長板状をなすこともある。低温熱水性アンチモン鉱床で二次鉱物として生成されることが多い。日本では鹿児島県日置(ひおき)郡吹上(ふきあげ)町(現、日置市)日ノ本(ひのもと)鉱山(閉山)、静岡県磐田(いわた)郡龍山(たつやま)村(現、浜松市)峯之沢(みねのさわ)鉱山(閉山)のものが有名である。
共存鉱物は輝安鉱、黄安華(おうあんか)、紅安鉱、石英、方解石など。同定は以下のことによる。白色金剛光沢、劈開(へきかい)面上での真珠光沢、二方向の完全な劈開、白色の鉱物としては比較的大きい比重、色は無色に近くても条痕(じょうこん)ははっきり白い。命名は15世紀、アンチモンに関する文献を書いた錬金術師バジリウス・バレンチヌスBasilius Valentinus(1394―?)にちなむ。
[加藤 昭]