翻訳|stibnite
重要なアンチモンの鉱石鉱物。輝蒼鉛鉱(きそうえんこう)とは同一構造。中間相に対し、かつて幌別鉱(ほろべつこう)という名称が提唱されたが、現在は用いられていない。メタ輝安鉱metastibniteと称する赤色粉末状の非晶質物質と同質異像関係にあるという説もあるが、メタ輝安鉱は少量の水分を含んでいるという説もある。比較的低温生成の熱水鉱床中に産し、黄鉄鉱、閃(せん)亜鉛鉱、ベルチェ鉱などと共存し、柱状から針状の結晶をなす。愛媛県西条市市ノ川(いちのがわ)鉱山(閉山)のものは、結晶の大きさ、結晶面の複雑さで世界的に有名であったが、現在は中国からかなりの良晶が発見されている。英名は元素アンチモンの別名スチビウムstibiumに由来する。
[加藤 昭 2016年3月18日]
化学組成はSb2S3の鉱物。少量のFe,Pb,Cuなどを含むことがまれでない。輝ソウ鉛鉱Bi2S3とは同構造で,両者のあいだには連続固溶体が形成される。c軸方向に伸びた柱状の良好な結晶をなすこともまれでないが,針状結晶の放射状集合体,塊状集合体として産することも多い。柱面には縦の条線が発達する。{010}に完全なへき開があり,へき開に沿いすべり面を生じやすい。色,条痕ともに鉛灰色であるが,黒っぽく変色していることが多い。新鮮な面,へき開面では非常に強い金属光沢を示す。比重4.63,モース硬度2で小刀で切ることができる。低温熱水鉱脈鉱床または低温熱水交代鉱床,温泉沈殿物中に産出し,しばしば黄鉄鉱,白鉄鉱,シンシャ,鶏冠石,石黄,硫塩鉱物などを伴う。輝安鉱はアンチモンの最も重要な鉱石として採掘される。日本では兵庫県中瀬鉱山,愛媛県市ノ川鉱山で大規模な輝安鉱-石英脈が採掘された。市ノ川鉱山からは最大長さ60cm,太さ径6cmに及ぶ大結晶が多産し,国内はもとより外国の博物館にもみごとな標本が多数陳列されている。
執筆者:青木 正博
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…アンチモン鉱物としては,輝安鉱stibnite Sb2S3,方安鉱senarmontite Sb2O3,バレンチン鉱valentinite(アンチモン華ともいう)Sb2O3,セルバンタイトcervantite(セルバンテス鉱ともいう)Sb2O4,ケルメサイトkermesite(紅安鉱ともいう)Sb2S2O,黄安鉱stibiconite Sb3O6(OH)などがあるが,アンチモン鉱石として重要なのは輝安鉱のみである。輝安鉱はふつう低温熱水性鉱脈鉱床に産するが,他の鉱物はこの輝安鉱鉱床の酸化帯にのみ産する。…
…アンチモン鉱物としては,輝安鉱stibnite Sb2S3,方安鉱senarmontite Sb2O3,バレンチン鉱valentinite(アンチモン華ともいう)Sb2O3,セルバンタイトcervantite(セルバンテス鉱ともいう)Sb2O4,ケルメサイトkermesite(紅安鉱ともいう)Sb2S2O,黄安鉱stibiconite Sb3O6(OH)などがあるが,アンチモン鉱石として重要なのは輝安鉱のみである。輝安鉱はふつう低温熱水性鉱脈鉱床に産するが,他の鉱物はこの輝安鉱鉱床の酸化帯にのみ産する。…
※「輝安鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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