日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄安華」の意味・わかりやすい解説
黄安華
おうあんか
stibioroméite
輝安鉱などの酸化による二次的生成物として産し、また初生的に熱水鉱脈鉱床の末期産物として中性からアルカリ性の条件で生成される鉱物。
1832年フランスの鉱物学者でパリ大学教授であったビューダンFraçnois Sulpice Beudant(1787―1850)により、ドイツのバイエルン州ゴルトクローナハGoldkronachから発見された。1832年の原記載では原産地がゴルトクローナハとされているが、ビューダンの原記載および原標本では理想式はきちんと指定されておらず、1952年アメリカの地質学者ビタリアーノCharles J. Vitaliano(1910―2000)およびニュージーランドの鉱物学者メーソンBrian Harold Mason(1917―2009)の世界各地に産する33個の標本のX線による再検討では、スウェーデンのストックホルム大学教授ウェストグレンArne Westgren(1889―1975)らによって1937年合成されたSb3O6(OH)と一致したX線粉末回折値が示されたため、これが理想式として採用されるもととなった。
皮膜状あるいは粉末状をなす。まれに正八面体の自形をなす。パイロクロア系鉱物と同一原子配列をもつこと、いわゆる超伝導素材の多くがこの配列を基調としていることでも知られる。英名は化学組成と粉末状の外観を意味するギリシア語にちなむ。これまで英名はstibiconiteが用いられてきたが、2010年に国際鉱物学連合はstibioroméiteを正式名称として採用した。和名は、色、成分、外観にちなむ。
[加藤 昭 2016年1月19日]