バンデルポスト(英語表記)Laurens Van der Post

改訂新版 世界大百科事典 「バンデルポスト」の意味・わかりやすい解説

バン・デル・ポスト
Laurens Van der Post
生没年:1906-96

南アフリカ,現在のオレンジ自由州出身の作家探検家。オランダ系開拓民の旧家に生まれ,オレンジ自由国首相を務めた父をもち,幼少年期を農園で過ごす。大学在学中から文筆活動を始め,卒業後新聞記者となり,1926年日本を旅行。30年《ケープ・タイム》主筆となるが,アパルトヘイト(人種隔離政策)反対キャンペーンが原因で翌年辞職。初めての小説《地方》(1934)で人種差別と左翼運動のかかわりを扱う。第2次大戦中はイギリス陸軍に入隊し,ジャワで日本軍の捕虜となる。このときの捕虜収容所体験をもとに,日本人を理解しようとする主人公に焦点をあてた《影の獄にてA Bar of Shadow》(1952)が書かれた。この小説は大島渚監督の映画《戦場メリークリスマス》(1983)の原作である。戦後はイギリス政府の命により,ニヤサランド(現,マラウィ)やカラハリ砂漠などへ数度にわたる探検を行い,それをもとに《奥地への旅》(1951)や絶滅に瀕するサンを描いた《カラハリの失われた世界The Lost World of the Kalahari》(1958)などの探検記を著した。小説には,ロンドンの南アフリカ人を扱った《暖炉そばの顔》(1953),戦中の南アフリカ生活を描いた《フラミンゴ羽根》(1955)などのほか,《影の獄にて》を第1部とする三部作《種と種まく人The Seed and the Sower》(1963)などがある。ほかに《ロシアへの旅》(1967),《日本の肖像》(1968)などの旅行記を発表し,心理学者ユングとの親交に基づく《カール・グスタフ・ユングの生涯》(1971)などのドキュメンタリー映画の製作にも携わっている。対象とする異文化に生きる人々に対する深い理解と愛情に裏づけられた,思索的で詩的な文体を特徴とする。
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百科事典マイペディア 「バンデルポスト」の意味・わかりやすい解説

バン・デル・ポスト

南アフリカ共和国の作家。旧連邦オレンジ自由州出身。グレー・カレッジ卒。新聞記者を経て文筆活動に入る。日本軍捕虜体験にもとづく《影の獄にて》(1952年)は,のち大島渚監督《戦場のメリークリスマス》として映画化された。《奥地への旅》《カラハリの失われた世界》などの探検記,親交のあったユングの評伝やドキュメンタリー映画の製作でも知られる。

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