改訂新版 世界大百科事典 「バンレイシ」の意味・わかりやすい解説
バンレイシ (蕃茘枝)
custard apple
sweet-sop
Annona squamosa L.
バンレイシ科バンレイシ属で,果実が食用になるのは約30種あり,うち約10種が栽培されているが,バンレイシはそのうちの代表種である。甘みに富むクリーム状の果肉から英名が,果面の亀甲(きつこう)状と果形から漢名の〈釈迦頭〉が由来している。5~6mになる低木で,根ぎわから分枝する。落葉樹であるが熱帯では常緑。葉は楕円形で互生する。1花房に1~3花を着生する。果実は約8cmの卵形の集合果で,各片が亀甲状をなし,黄緑色に熟す。果肉はクリーム状でダイズ大の黒色種子が混在する。甘みも香りもあるが,系統によりざらざらする石細胞を感じる果実もある。熱帯アメリカの原産であるが,現在は全世界の熱帯域で広く栽植される。果実の輸送性が乏しく,大部分が現地で消費される。同属の,果実表面に肉状のとげがあるトゲバンレイシA.muricata L.(英名sour-sop)や,果形が心臓形をなすギュウシンリA.reticulata L.(英名common custard apple)も熱帯域で栽植されているが,品質はバンレイシに劣る。バンレイシ類で,もっとも美味とされるものにチェリモヤがある。生食のほか,未熟果の野菜的利用,砂糖漬,シャーベット,清涼飲料などに加工される。種子は駆虫剤や下剤に,根は解熱剤として用いる。葉を茶に利用する例もある。
執筆者:岸本 修
バンレイシ科Annonaceae
世界中の熱帯・亜熱帯域に広く分布し,約130属2300種を含む大きな科で,モクレン目に属する。すべて木本性で,常緑の高木から低木,あるいはつる性で,ポポーのように温帯産で落葉のものはごく少数である。葉は互生し全縁。花は3数性で,通常,萼は基部で合着し3裂片があり,花弁は3枚ずつ内外2輪につく。おしべ,めしべは多数が密生。めしべは離生心皮よりなる。果実は乾果で柄をもち,多数が果托につくが,果実を食用とするバンレイシのように,集合果となり多汁のものもある。日本にはただ1種,琉球諸島の南や台湾蘭嶼(らんしよ)にクロボウモドキPolyalthia liukiuensisが分布する。
執筆者:植田 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報