日本大百科全書(ニッポニカ) 「バンレイシ」の意味・わかりやすい解説
バンレイシ
ばんれいし / 蕃茘枝
castard apple
sugar apple
[学] Annona squamosa L.
バンレイシ科(APG分類:バンレイシ科)の半落葉小高木。果実の形を釈迦(しゃか)の頭に例え、シャカトウ(釈迦頭)、シャカカ(釈迦果)、ブットウカ(仏頭果)と称したり、また、なし状果に例えてバンリ(蕃梨)ともいう。熱帯アメリカから西インド諸島が原産地で、今日では世界の熱帯で栽培される。葉は互生し、披針(ひしん)形または長披針形で、長さ6~15センチメートル、幅3.5~5センチメートル。花は葉腋(ようえき)に下垂し、萼(がく)は緑色、花弁は緑白ないし緑黄色で、3枚の外弁と退化した3枚の内弁とからなる。果実は、花床で多くの心皮が融合してできた集合果で、果皮面は小指頭大のいぼ状突起に覆われ、円形、心臓形または広卵形で、長さ6~9センチメートル、径6~7センチメートル。黄緑色に熟す。果肉は柔軟多汁で甘味に富む。生食のほかシャーベットに用いる。種子は黒く、紡錘形、長さ1.5センチメートル、径0.8センチメートル、刺激性のアルカロイドを含み、シラミよけに用い洗髪料とする。
近縁種が多数あり、なかでもトゲバンレイシ(刺蕃茘枝)A. muricata L.はもっともよく知られている。熱帯アメリカ原産で、花は緑黄色を帯び、周年開花する。果実は0.5~1キログラム、長楕円(ちょうだえん)または不整形。果面に柔らかい刺(とげ)をまばらにつける。果肉は白色、甘味と酸味がほどよく調和し、生食のほか清涼飲料とする。このほかチェリモヤA. cherimola Mill.、ギュウシンリ(牛心梨)A. reticulata L.、やや悪臭のあるポンドアップル(別名イケリンゴ)A. glabra L.などがある。ともに熱帯アメリカ産で、生食のほか清涼飲料とする。
[飯塚宗夫 2018年7月20日]