バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想(読み)バーチ・スウィンナートン=ダイアーよそう(その他表記)Birch and Swinnerton-Dyer conjecture

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想
バーチ・スウィンナートン=ダイアーよそう
Birch and Swinnerton-Dyer conjecture

整数論における未解決予想で,「楕円曲線の有理点の階数が,対応する L関数の s=0 における零点の位数に等しい」というもの。楕円曲線とは 2変数の 3次式で定義される代数曲線で,複素数で考えるとトーラス輪環体ドーナツの表面の曲面)で表される図形になる。また,楕円曲線の有理点とは,座標がともに有理数となるような楕円曲線上の点で,言い換えると,楕円曲線を定義する 3次式の有理数解である。楕円曲線の有理点全体の集合は可換群(→アーベル群)の構造をもつことが知られていて,さらにモーデル定理により,これは有限生成のになる。したがって,有理点全体の集合の大きさをはかる階数という整数が定義される。予想の帰結として,有理点の個数は L関数が s=0 において 0になるときは有限個で,0にならないときは無限個であることに従う。1960年代の初めにイギリスの数学者ブライアン・バーチとピーター・スウィンナートン=ダイアーは,ケンブリッジ大学のコンピュータ EDSACを用いて楕円曲線に関する数値計算を行ない,この有名な予想を提唱した。2000年にアメリカ合衆国のクレイ数学研究所が数学の七つの未解決問題ミレニアム問題として提出し,それぞれの問題に 100万ドルの懸賞金をかけた。バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想はこれらの問題の一つとしてあげられている。

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