サン・キュロット(読み)さんきゅろっと(英語表記)sans-culotte フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サン・キュロット」の意味・わかりやすい解説

サン・キュロット
さんきゅろっと
sans-culotte フランス語

フランス革命期の小ブルジョアジーの呼び名。ブルジョアジーから疎外された都市の小商店主、小親方、職人をさし、ひいては農民をも含むこととなる。この名はもともと、当時の上層階級貴族やブルジョアジーが着たキュロット半ズボン)ではなく、長ズボンを着ていた小ブルジョアジーが「キュロットなし」つまり「サン・キュロット」という蔑称(べっしょう)を与えられたことに発するのであるが、これを逆手にとってむしろ誇りをもって自称としたもの。

 彼らは、雇用労働に頼らない小規模の独立自営を理想として追求するため、封建社会打倒後の新しい社会をつくろうとまっしぐらに資本主義を目ざし、雇用労働を必須(ひっす)の条件とする大規模・大経営コースをとるブルジョア的理想とは対立するものであった。この二つの路線は、自由主義対平等主義、モンテスキュー主義対ルソー主義といった形で表面化するが、ブルジョアジーが指導し、サン・キュロットがそれを推進し、協力するということが続く限り、革命は前進したといいうる。革命期の種々の民衆運動中、1789年7月のバスチーユ攻撃、同年10月のベルサイユ行進、92年8月10日の人民蜂起(ほうき)、93年5月31日~6月2日の蜂起はおおむね両者の協力が成立していたということができるが、91年7月17日のシャン・ド・マルス虐殺、92年6月20日の蜂起などではサン・キュロットのみの運動で大きな効果をもちえなかった。93年の蜂起で権力を握った山岳派(モンタニャール)が小ブルジョア独裁をとってからは、ブルジョアジーとの協力は破れ、しかも小ブルジョアジーのみを基盤とするアンラジェ(過激派)やエベール派といった分派が生まれ、独裁の必要上これらを抑えざるをえなくなったため、94年7月の「テルミドールの反動」でブルジョアジーが反撃に転じたとき、もろくも敗退することとなる。

[樋口謹一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サン・キュロット」の意味・わかりやすい解説

サン=キュロット
Sans-Culottes

フランス革命期における革命的大衆をさす。小商工業者,被雇用者,小土地所有農民,小借地農民などから成り,貴族的有産者を象徴する「金ぴかの半ズボン (キュロット) 」ではなく長ズボンを着用したところからサン=キュロットと呼ばれた。彼らはみずから勤労する階級であり,「愛国者,自由と正義と人民の友」とも定義され,第三身分のなかでも「ブルジョアジー」からは区別された「民衆」と同義とみなすことができる。革命の過程でのもろもろの事件 (バスティーユ牢獄の奪取,チュイルリー宮殿襲撃,ジロンド派追放に直結する国民公会包囲) へのサン=キュロットの直接介入の動機は,彼らの消費生活の要求に結びつくものであり,恐怖政治の政策の重要な支柱となった最高価格法,買占め取締り法,食糧徴発,公設貯蔵庫などの制度は,サン=キュロットの国民公会に対する公然の圧力の結果でもあった。

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