日本大百科全書(ニッポニカ) 「パーニニ」の意味・わかりやすい解説
パーニニ
ぱーにに
Pāini
生没年不詳。紀元前5~前4世紀ころの古代インドの著名な文典家。西北インドの人。その著『アシュターディヤーイー』Aādhyāyī(『パーニニ文典』とも)によって不朽の名を残す。本書は、サンスクリット語の文法規則を記号化し、きわめて簡潔な文体でまとめたものだが、これにより古典サンスクリットが「正しい(サンスクリタ)」規範を与えられたと同時に、文法学も単なるベーダの補助学から、完全に一つの独立した学問として体系組織化されるに至った。パーニニの文典はその後のインドにおける文法学の発達に確かな礎(いしずえ)を提供したばかりでなく、近代言語学の発達にも少なからず貢献している。
[矢島道彦 2018年7月20日]