パーニニ(その他表記)Pāṇini

デジタル大辞泉 「パーニニ」の意味・読み・例文・類語

パーニニ(Pāṇini)

前5~4世紀ごろのインド文法学者。古典サンスクリット語の文法を研究。その集大成である全8巻の「パーニニ文典」(アシュターディヤーイー)によりインド文法学の基礎確立

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精選版 日本国語大辞典 「パーニニ」の意味・読み・例文・類語

パーニニ

  1. ( Pāṇini ) 前五~前四世紀頃のインドの文法学者。古典サンスクリット語の文法を集大成し、パーニニ文典(アシュターディヤーイー)を著わした。生没年不詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「パーニニ」の意味・わかりやすい解説

パーニニ
Pāṇini

古代インド,前5~前4世紀の文法学者。通常《パーニニ文典(文法)》の名で知られる《アシュターディヤーイーAṣṭādhyāyī(八章編)》の著者。彼はベーダ語ベーダの時代に用いられていたサンスクリット古語)の用例を顧慮しつつ,〈文法を学ばずして,正しい語法をわきまえた人士〉の言語使用に範を取り,その当時西北インドに〈話し言葉〉とされていたインド・アーリヤ語に規矩を与え,サンスクリットをインドの文章語,雅語,聖語として定着させた。8章のおのおのはそれぞれ4節に分かれ,全体は約4000のスートラ(経,短文)より成るが,各スートラは記憶の便を考慮して略符号を用いつつ,極度に圧縮された短い規則を含んでいる。彼はサンスクリットをきわめて客観的かつ正確に観察することによって,言語を意味のある最小単位(前接辞,語根,接尾辞,人称語尾など)に分解し,この客観的分析の結果を文章中に再編成する間に規則を導き出した。そして,それらはサンスクリットの音韻論,形態論,造語法,文章論にわたり,また歴史的・地理的方言差にまで言及している。その言語の客観的分析,帰納的研究方法は,近代言語学に貢献するところが少なくなかった。

 パーニニの学派カーティヤーヤナパタンジャリ巨匠によって継承され,この3人を文法の三聖と称するが,非パーニニ系統の文法綱要書に《カータントラ》があり,これはベンガル,カシミールから中央アジアに流布し,カッチャーヤナのパーリ語文法,ドラビダ語文法にも影響し,チベットにも伝えられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「パーニニ」の意味・わかりやすい解説

パーニニ
ぱーにに
ini

生没年不詳。紀元前5~前4世紀ころの古代インドの著名な文典家。西北インドの人。その著『アシュターディヤーイー』Aādhyāyī(『パーニニ文典』とも)によって不朽の名を残す。本書は、サンスクリット語の文法規則を記号化し、きわめて簡潔な文体でまとめたものだが、これにより古典サンスクリットが「正しい(サンスクリタ)」規範を与えられたと同時に、文法学も単なるベーダの補助学から、完全に一つの独立した学問として体系組織化されるに至った。パーニニの文典はその後のインドにおける文法学の発達に確かな礎(いしずえ)を提供したばかりでなく、近代言語学の発達にも少なからず貢献している。

[矢島道彦 2018年7月20日]

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百科事典マイペディア 「パーニニ」の意味・わかりやすい解説

パーニニ

前5―前4世紀ころのインドのサンスクリット文法学者。北インドの出身。サンスクリット文法の細則に関する研究のほか,言語に関する哲学的研究も行った。その著《パーニニ文典》は今日でも古典サンスクリット文法の権威。
→関連項目パタンジャリ

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「パーニニ」の解説

パーニニ
Pāṇini

生没年不詳

古代インドの文法家。前5~前4世紀の人。伝記はわからないが,『アシュターディヤーイー』という8章からなる古典サンスクリット文法の簡潔な規則を記した書をつくった。これはインド文法学の権威ある書として,後世多くの注釈書,解説書が著された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パーニニ」の意味・わかりやすい解説

パーニニ
Pāṇini

インド古代の文法家。前6世紀あるいは前5世紀頃の人。いわゆる『パーニニ文法』の編集者。

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