ヒゲガラ(その他表記)bearded tit
Panurus biarmicus

改訂新版 世界大百科事典 「ヒゲガラ」の意味・わかりやすい解説

ヒゲガラ (髭雀)
bearded tit
Panurus biarmicus

スズメ目ヒタキ科の鳥。雄のくちばしの基部から下方にひげ状の黒斑があることからその名がついた。全長約16cm,雄は頭部灰色背面は淡黄褐色,腹は白っぽい。下尾筒は黒色。雌は全体に褐色で色が淡い。ヨーロッパから小アジア,旧ソ連南部を経て中国の東北地方にまで分布している。日本には迷鳥としてまれに渡来する。ヨシ原にすみ,数羽から50羽くらいの群れでくらしていることが多い。ヨシの茎を巧みに移り渡りながら,春から夏にかけてはおもに昆虫を,秋・冬季にはおもにヨシやスゲ種子をとって食べる。繁殖期には,雌雄1羽ずつのつがいに分かれるが,巣と巣は近接していることが多い。巣はヨシの茎の間に枯葉を集めてつくり,産座にはヨシの花穂を敷く。1腹の卵数は4~7個,抱卵,育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。各地でヨシ原が減少しているため近年減少している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒゲガラ」の意味・わかりやすい解説

ヒゲガラ
Panurus biarmicus; bearded reedling

スズメ目ヒゲガラ科。1科 1属 1種。かつてはシジュウカラ科に分類されていたが,その後チメドリ科に置かれ,今日では独立したヒゲガラ科に分類されている。全長 15~17cm。雌雄異色。雄は頭上と後頭が灰色,背以下の背面は黄褐色。眼先から頬にかけての羽毛が黒く,それがひげ状に見えることからこの名がつけられた。下面は白いが,胸の両側はぶどう色。雌は頭上が黄褐色で,雄にある黒いひげ状の羽毛がない。ヨーロッパからモンゴルなどを経て中国東部,ロシアのウスリー地方までのユーラシア大陸温帯に分布する。日本にはまれに冬鳥(→渡り鳥)として渡来し,小群でアシ原に生息する。生息地域の大部分では渡りをせず,厳しい冬には多くの鳥が死ぬこともある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒゲガラ」の意味・わかりやすい解説

ヒゲガラ
ひげがら / 鬚雀
bearded tit
[学] Panurus biarmicus

鳥綱スズメ目ヒタキ科ヒゲガラ亜科の鳥。ヒゲガラ属の唯一種。この亜科にはほかにダルマエナガ属17種とオオダルマエナガ属1種がある。ヒゲガラは全長約16センチメートル、小さな体に長い尾をもち、体形はエナガに似ている。明るい赤褐色の羽色をもち、雄は目の下にひげ状の黒い部分があり、和名英名由来となっている。ヨーロッパからアジアにかけて、葦(あし)原に周年すみ、アシの種子など植物質をおもに食べる。日本では数回の迷行記録があるのみである。

[竹下信雄]

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