ビアズリー(読み)びあずりー(英語表記)Aubrey Vincent Beardsley

デジタル大辞泉 「ビアズリー」の意味・読み・例文・類語

ビアズリー(Aubrey Vincent Beardsley)

[1872~1898]英国画家黒白対比と流麗な描線で幻想と現実とが交錯した挿絵を描き、英国の世紀末耽美たんび主義を代表する人物とされる。挿絵「サロメ」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビアズリー」の意味・わかりやすい解説

ビアズリー(Aubrey Vincent Beardsley)
びあずりー
Aubrey Vincent Beardsley
(1872―1898)

イギリスの挿絵画家ブライトンに生まれる。ロンドンの保険会社の事務などを勤めたのち、1891年バーン・ジョーンズの勧めで画家となる決意を固める。ほとんど独学ラファエル前派ホイッスラー、日本の浮世絵版画などを消化し、独得の繊細なスタイルを築いた。92年に出版者デントから依頼されたT・マロリーの『アーサー王の死』の挿絵を皮切りに、93年創刊の『ステューディオ』誌や、オスカー・ワイルドの英語版『サロメ』(1894)、『イエロー・ブック』誌(1894創刊)、『サボイ』誌(1896創刊)などの挿絵や装丁の仕事で、大胆に省略されデフォルメされた形体と流麗な線描、白と黒の鮮やかな対比によって退廃の雰囲気を色濃く漂わす独自の世界をつくりあげ、ワイルドとともにイギリスの世紀末、いわゆるイエロー・ナインティーズ(1890年代)を代表する人物となった。98年、肺結核のため南フランスのマントンで亡くなったとき、いまだ25歳の若さであった。

[谷田博行]

『S・ウィルソン著、中川伸子訳『ビアズリー』(1985・岩崎美術社)』『大森忠行編著『ビアズリーのイラストレーション』(1970・岩崎美術社)』


ビアズリー(Monroe Curtis Beardsley)
びあずりー
Monroe Curtis Beardsley
(1915―1985)

アメリカの美学者、哲学者。エール大学で博士号取得(1939)後、スワースモア大学、テンプル大学の教授を歴任。アメリカ美学会会長(1967~1968)。ウィムザットWilliam K. Wimsatt Jr. (1907―1975)と共同執筆した『意図の誤謬(ごびゅう)』『情緒の誤謬』で、批評の根拠を創作家の意図や鑑賞者の印象から切り離し、作品自体の批評に向かうことを主張。また、主著の『美学』(1958)では、芸術作品の構造を解明し、心理学的美学に対し、メタ批評としての哲学的美学を提唱した。彼の思想には、インガルデンの層構造の理論、ストローソンらの言語哲学、デューイの道具主義的思想などの影響が認められる。

[相沢照明 2015年10月20日]

『Monroe C. Beardsley, Elizabeth L. BeardsleyPhilosophical Thinking : An Introduction (1965, Harcourt, New York)』『Monroe C. BeardsleyAesthetics from Ancient Greece to the Present : A Short History (1966, Macmillan, New York)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ビアズリー」の意味・わかりやすい解説

ビアズリー
Aubrey Vincent Beardsley
生没年:1872-98

世紀末の代表的挿絵画家。イギリス,ブライトンに生まれ,建築事務所,保険会社に勤めた後1891年,バーン・ジョーンズに勧められて画家を志す。デント版の《アーサー王の死》を最初に《ステュディオ》,O.ワイルドの《サロメ》,《イェロー・ブック》,《サボイ》などの挿絵や表紙の制作に携わる。ラファエル前派,ホイッスラー,日本の版画などの影響を受けるが,形体を自由にデフォルメし,流麗な線と,黒白の対比が鮮やかな素描で,頽廃の色濃い特異な装飾的画面をつくり出している。結核に侵された虚弱な心身は屈折した官能の世界を彷徨し,後期の作品には,ポルノグラフィックな傾向が強くなっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビアズリー」の意味・わかりやすい解説

ビアズリー
Beardsley, Aubrey Vincent

[生]1872.8.21. ブライトン
[没]1898.3.16. メントン
イギリスの挿絵画家。ほとんど独学で絵画を学び,ペン画による唯美的な挿絵を描いて当時のアール・ヌーボー美術に大きな影響を与えた。ラファエル前派や浮世絵の影響もみられる鋭い線のきわめて繊細な筆致で,エキゾチックな幻想と病的感覚の世界を表現。5年足らずの短い活躍ののち持病の呼吸器病で没した。主要作品は『イエロー・ブック』『サボイ』誌などの挿絵のほか T.マロリーの小説『アーサーの死』の挿絵 (1893) ,O.ワイルドの悲劇『サロメ』の挿絵 (94) 。

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百科事典マイペディア 「ビアズリー」の意味・わかりやすい解説

ビアズリー

英国の挿絵画家。ブライトン生れ。絵画を独学し,1892年ごろ,ラファエル前派や日本の浮世絵などの影響を受け,感受性豊かな装飾的様式を確立。《イエロー・ブック》《サボイ》などの雑誌やトマス・マロリーの《アーサー王の死》(1893年),ワイルドの《サロメ》(1894年),アレグザンダー・ポープの《髪の毛盗み》(1896年)に描いた挿絵は,アール・ヌーボーの挿絵芸術の頂点をなしている。

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世界大百科事典(旧版)内のビアズリーの言及

【アール・ヌーボー】より

… 19世紀のアカデミズムや自然主義に抗して出発したこの傾向は,油絵などアカデミズムの強い領域ではなく,ポスターや挿絵,工芸など,周辺の応用芸術,装飾芸術の分野にあらわれた。そのため,アール・ヌーボーの表現には強い装飾性がみられる(ビアズリーミュシャなど)。また,アール・ヌーボーは平面そのものの独自な意味をとりもどし,それを明快に分割することで,新しい視覚的秩序をつくり出そうとする。…

【イギリス美術】より

… イギリス美術の造形的・様式的特質としては,色彩よりも線,とりわけ曲線のもつ表現的,装飾的,あるいは象徴的効果に対して敏感であることがあげられる。この傾向はケルトの装飾写本から,ホガースのいうS字形の〈美しい線line of beauty〉を経てブレーク,さらに19世紀のW.モリスやW.クレーン,あるいは世紀末のA.V.ビアズリーのデッサンに至るまで一貫してうかがえる。こうした線の装飾的な意匠(パターン)を駆使して全体を構成してゆく傾向は,建築,とりわけゴシック建築にも見られる。…

【ポルノグラフィー】より

…なお,19世紀はポルノグラフィックな芸術においても多産な世紀であった。A.ビアズリー,F.ロップス,F.vonバイロスなどの作品がすぐれている。 20世紀に入っても,ビクトリア朝的検閲のある部分はそのままであった。…

※「ビアズリー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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