日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビシュヌ・プラーナ」の意味・わかりやすい解説
ビシュヌ・プラーナ
びしゅぬぷらーな
Viupurāa
ヒンドゥー教のプラーナ聖典群のなかで最古層に属するものの一つ。その名のとおりビシュヌ派に所属し、最高神ビシュヌに捧(ささ)げられた聖典である。全六巻からなる。聖仙バシシュタの孫パラーシャラとその弟子マイトレーヤとの対話をもって始まり、そのおもな内容としては、ビシュヌ神の讃歌(さんか)、宇宙の起源・創造についての神話、また宇宙の構造や周期的時間論、人類の祖マヌとその役割、ベーダの諸学派の伝統、ビシュヌ教徒の宗教生活、牧童クリシュナの伝説などを説く。さまざまな神話・伝説を盛り込みながら、最高神ビシュヌへの私心のない献身的な愛(バクティ)とその恩恵・功徳(くどく)をたたえる本書は、古来とくに愛好された聖典の一つであり、ビシュヌ派の教義・信仰の普及と同派の発展に大いに寄与した。
[矢島道彦]