日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンタン」の意味・わかりやすい解説
モンタン
もんたん
Yves Montand
(1921―1991)
フランスのシャンソン歌手、映画俳優。イタリアのミラノに近いモンスマーノに生まれる。本名Ivo Livi。ユダヤ人のため一家はファシストに追放され、2歳のときにマルセイユに移住し、以後同地で育つ。5歳のときにフランスに帰化。幼いときから歌の才能を示し、のど自慢などにも出ていた。1944年ABC劇場に出演してパリ・デビューを果たし、その後ピアフに才能を認められ、数々の忠告を受けるようになる。1949年にエトアール劇場で行ったワンマン・ショー形式のリサイタルの成功により、名声を確立した。レパートリーはシャンソン・レアリストの歌から、文学的シャンソン、社会派の歌、トレネ譲りの軽妙なリズムとユーモアにあふれた歌に至るまできわめて広いものがある。代表的名唱に『枯葉』『ガレリアン』『パリで』『ルナ・パーク』など。
映画出演は1945年からで、とくに1952年の『恐怖の報酬』で巧みな演技をみせ、以後映画俳優として国際的に活躍するようになる。そのほかの映画出演に、1951年に結婚したシモーヌ・シニョレSimone Signoret(1921―1985)と共演の『サレムの魔女』(1956)、コスタ・ガブラス監督の三部作『Z』(1968)、『告白』(1969)、『戒厳令』(1972)など。さらに、政治・平和運動などへの積極的な参加でも知られた。
[田井竜一]
『R・カナヴォ、R・キクレ著、長塚隆二訳『イヴ・モンタン――ある男の歌』(1982・早川書房)』▽『H・アモン、P・ロトマン著、土屋進訳『イヴ・モンタンぼくの時代』(1995・文芸春秋)』