物質代謝(読み)ブッシツタイシャ

  • metabolism

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

生体内で行われる物質の分解および合成に関する化学変化の総称で、物質交代、新陳代謝、あるいは単に代謝ともいう。この変化を、エネルギーの出入りを主にしてみた場合がエネルギー代謝であり、物質代謝とエネルギー代謝は共役している。

 すべての生物は、外界から摂取した物質を自分に必要な構成物質につくりかえ、また体内の物質を分解して自己を維持するためのエネルギーを獲得し、老廃物を体外に排出している。このように、生物は一定の形態を備えたままの状態を保っているようにみえるが、その構成成分は絶えず壊され排出され、新しい物質によって補充されている。すなわち、生体を構成する物質の合成と分解が行われている。この合成と分解は一連の化学反応の組合せからなり、これらの反応は酵素による触媒作用を受けている。個々の物質の合成または分解反応をひとつなぎにしたものを代謝経路とよび、ある物質がこの経路に入ると、選択の余地なく一連の反応によって変化を受けることになる。この経路はかならずしも一直線ではなく、分岐点があったり回路になっていたりする。この分岐点にある物質は細胞の代謝のうえで重要である。たとえば、グルコース‐6‐リン酸、ピルビン酸、α‐ケトグルタル酸、オキサロ酢酸などのほか、もっとも重要なアセチル補酵素Aがある。

 物質代謝は特定の物質群に着目して、炭水化物代謝、脂質代謝、タンパク質代謝をはじめ、ステロイド代謝、アミノ酸代謝、プリン代謝などとよばれるが、これらの代謝経路は相互に連関しており、分解の中間物質は他の構成成分の前駆物質となっている。たとえば、グルコースの分解で生成するグリセリン‐3‐リン酸は、セリン、グリシン、システインなどのアミノ酸合成の出発物質となる。また、生体物質の合成および分解は酵素反応によることから、ある生物の代謝経路の複雑さはその遺伝情報の量、すなわち、DNAの量により規定されるともいえる。

[飯島康輝]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 外界からとり入れた物質から必要な構成成分をつくるとともに生体活動のエネルギーを得る、生体組織が行なう化学変化の総称。新陳代謝。物質交代。代謝。

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化学辞典 第2版の解説

新陳代謝,代謝,物質交代などともいう.生体と外界との間には絶えず物質の出入りがあり,生体に取り込まれた物質は多種多様の化学変化を経たのち,異なった物質となって体外に出される.この変化を物質代謝とよび,同化と異化とに区別される.同化は生物が外界から取り入れた物質を材料として生体有機化合物を合成することであり,一般に,緑色植物と動物とでは同化の態様に大きな相違がある.たとえば,植物は二酸化炭素,無機窒素化合物から複雑な有機化合物を合成する能力をもつのに対して,動物は既存の有機化合物を分解して低レベルの成分にし,これを材料として複雑な有機物質を合成する.前者の状態を独立栄養後者の状態を従属栄養と称する.異化は生体が体内の有機化合物を分解して簡単な化合物にかえることであり,多くの場合,生命活動のためのエネルギーを供給する意義をもつ.生物は同化によって生体内に有機化合物を蓄積してエネルギーを補充,増加するとともに,異化によって遊離するエネルギーを消費して生命活動を継続する.このように,物質代謝には必ずエネルギーの変転が伴う.[別用語参照]エネルギー代謝

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内の物質代謝の言及

【生物】より

…確かにほとんどすべての生物は成長するが,しかし,明らかに無生物と考えられる鉱物の結晶も成長する。物質代謝が生物の最も主要な性質だとされたこともあった。生物は物質エネルギーを外界からとりこみ,それを自己に同化して成長するとともに,不要となった構成成分を分解して捨てる。…

【代謝】より

…地球上の各種生物が外界との密接なかかわりをもちつつ,しかも自己の生命を維持するために,必要なさまざまな活動を推進するための最も基本になる活動が代謝にほかならない。代謝には,エネルギー代謝,物質代謝(物質交代)という二つの用語に示されるように,エネルギーの獲得,利用と物質の変換が不可欠な活動である。言い換えると,代謝とは酵素の触媒作用に助けられて,生物の体内で絶えまなく営まれている各種の化学反応の総称ともいえる。…

※「物質代謝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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