フエフキダイ(その他表記)Lethrinus haematopterus

改訂新版 世界大百科事典 「フエフキダイ」の意味・わかりやすい解説

フエフキダイ (笛吹鯛)
Lethrinus haematopterus

スズキ目フエフキダイ科の海産魚。別名タマミ。〈タイ型魚類〉の一種で,タイ類とよく似た体型をしているが,吻(ふん)がやや突出しており,両あご側部の歯が1列の臼歯(きゆうし)状の円錐歯である点で異なる。中部日本以南,西部太平洋,オーストラリアなどに分布している。沖縄でクチナジ,高知でクチミ,鹿児島でシロダイ,和歌山でタマメと呼ぶなど地方名も多い。口内が鮮紅色のためクチビまたはクチビダイと呼ぶ地方も多い。全長60cmに達する。体色は背方が赤紫褐色で腹方は淡い背びれとしりびれの縁辺は淡紅色。沿岸の岩礁域や砂れき域にすみ,甲殻類,棘皮(きよくひ)動物,多毛類などを食べている。産卵期は5~6月一本釣り定置網刺網,引網などで漁獲される。肉は白身で,美味である。刺身塩焼き煮つけ,空揚げなどにする。

 フエフキダイ科Lethrinidaeの魚は日本からは4属26種が報告されており,いずれも南日本以南の岩礁域を中心にすんでいる。その一部に有毒な種を含むので注意する必要がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フエフキダイ」の意味・わかりやすい解説

フエフキダイ
ふえふきだい / 笛吹鯛
Japanese scavenger
Chinese emperor
common lentjan
[学] Lethrinus haematopterus

硬骨魚綱スズキ目フエフキダイ科に属する海水魚。新潟県以南の日本海沿岸、神奈川県以南の太平洋沿岸、東シナ海、南西諸島、台湾沿岸、南シナ海などに分布する。フエフキダイ類のなかでもっとも北にまで分布する種で、日本海に多く、太平洋岸や南西諸島には少ない。体は卵形側扁(そくへん)する。体高は頭長より著しく高い。吻(ふん)はやや突出し、頭の上部外郭は吻端から後頭部まで直線状。眼下幅は広い。両顎(りょうがく)前部に各2対の犬歯が、側部に1列の臼歯(きゅうし)状円錐歯(えんすいし)がある。頬(ほお)に鱗(うろこ)のないのがこの類(フエフキダイ属)の特徴。背びれ棘(きょく)部中央基底と側線の間の上方横列鱗(おうれつりん)数は5枚。胸びれの腋部(えきぶ)の内側に鱗がないか、あっても数枚。全長約60センチメートル。体背部は赤みを帯びた紫褐色で、腹部は淡褐色。各鱗に暗色斑(はん)がある。目の前から目の縁に沿って目の下まで達する不連続な青色の線がある。各ひれは淡紅色。口内は鮮紅色。この色から和歌山、高知、熊本などの諸県ではクチビ、クチミなどとよばれる。沿岸の岩礁域から水深100メートル以浅の砂泥底にすみ、甲殻類や小形の魚類などを食べる。産卵期は5~6月。一本釣り、定置網、底引網などで漁獲される。肉は白くて美味。刺身、塩焼き、煮つけなどにして賞味される。

[赤崎正人・尼岡邦夫 2017年9月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フエフキダイ」の意味・わかりやすい解説

フエフキダイ
Lethrinus haematopterus

スズキ目フエフキダイ科。全長 45cmになる。体は卵形に近く,側扁する。吻はやや突出する。体色は淡黄褐色で,腹方は淡い。口内は鮮紅色。両顎の前部に2対の犬歯がある。和歌山県以南,東インド諸島までに分布する。釣り,定置網などで漁獲される。肉は白色で,刺身,塩焼きなどにされ,美味。

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