フェリーニ(読み)ふぇりーに(英語表記)Federico Fellini

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェリーニ」の意味・わかりやすい解説

フェリーニ
ふぇりーに
Federico Fellini
(1920―1993)

イタリアの映画監督。1月20日アドリア海に面した小都市リミニに生まれる。漫画や似顔絵かき、ラジオの台本書き、ギャグライターなどを経て映画のシナリオに手を染める。1942年、女優のジュリエッタ・マシーナGiulietta Masina(1923―1994)と結婚(のちに彼女はフェリーニの多くの作品に出演)。第二次世界大戦後、ロッセリーニ監督ほかへの協力で、ネオレアリズモ期のイタリア映画一翼を担うことになった。監督としては『寄席(よせ)の灯(ひ)』(1950、共同監督)ですでに後のモチーフの一つである芸人たちを登場させているが、一本立ちは次作『白い酋長(シーク)』(1952)からである。『青春群像』(1953)では、精神的巣立ちができない地方都市の「のらくら」青年たちを描いてベネチア国際映画祭で受賞したが、彼の名が国際的になったのは『道』(1954)によってである。『道』でヒューマニズムの作家と受け取られた彼は『甘い生活』(1960)で現代ローマ退廃と宗教の無力を描き論争を巻き起こしたが、『8½』(1963)では「幻想の作家」としての資質を強く打ち出した。以後、女性の夢想世界『魂のジュリエッタ』(1965)、都市のファンタジー『フェリーニのローマ』(1972)、故郷への詩的幻想『アマルコルド』(1974)など一作ごとに独特の映像を創造し、現代のもっとも個性的な監督の一人となった。ほかに『崖(がけ)』(1955)、『カビリアの夜』(1957)、『サテリコン』(1969)、『道化師』(1970)、『カサノバ』(1976)、『女の都』(1980)、『そして船は行く』(1983)、『ボイス・オブ・ムーン』(1990)など。

[岩本憲児]

資料 監督作品一覧

寄席の灯[アルベルト・ラトゥアーダとの共同監督] Luci del varietà(1950)
白い酋長 Lo sceicco bianco(1952)
青春群像 I vitelloni(1953)
街の恋 L'amore in città - Un Agenzia matrimoniale(1953)
道 La strada(1954)
崖 Il bidone(1955)
カビリアの夜 Le notti di Cabiria(1957)
甘い生活 La dolce vita(1960)
ボッカチオ'70~「誘惑」 Boccaccio'70- Le tentazioni del dottor Antonio(1962)
8½ Otto e mezzo(1963)
魂のジュリエッタ Giulietta degli spiriti(1965)
世にも怪奇な物語~「悪魔の首飾り」 Histoires extraordinaires - Toby Dammit(1967)
サテリコン Fellini-Satyricon(1969)
フェリーニの道化師 I Clown(1970)
フェリーニのローマ Roma(1972)
フェリーニのアマルコルド Amarcord(1974)
カサノバ Il Casanova di Federico Fellini(1976)
オーケストラ・リハーサル Prova d'orchestra(1978)
女の都 La Citta delle donne(1980)
そして船は行く E la nave va(1983)
ジンジャーとフレッド Ginger e Fred(1985)
インテルビスタ Intervista(1987)
ボイス・オブ・ムーン La voce della luna(1990)
キング・オブ・アド The King of Ads(1991)

『岩本憲児編『フェリーニを読む――世界は豊穣な少年の記憶に充ちている』(1994・フィルムアート社)』『フェリーニ著、岩本憲児訳『私は映画だ』新装改訂版(1995・フィルムアート社)』『ジョン・バクスター著、椋田直子訳『フェリーニ』(1996・平凡社)』『コスタンツォ・コスタンティーニ編著、中条省平・中条志穂訳『フェリーニ・オン・フェリーニ』(1997・キネマ旬報社)』『トゥッリオ・ケジチ著、押場靖志訳『フェリーニ――映画と人生』(2010・白水社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェリーニ」の意味・わかりやすい解説

フェリーニ
Fellini, Federico

[生]1920.1.20. リミニ
[没]1993.10.31. ローマ
イタリアの映画監督。挿絵画家,旅回りの劇団員,ラジオの台本書きなどの仕事ののち,1945年から 1952年までロベルト・ロッセリーニの脚本家,助監督としてネオレアリズモ映画の誕生に大きく貢献した。1950年監督となり,4作目の『』La Strada(1954)の成功で一躍国際的名声を得た。作品には『カビリアの夜』Le notti di Cabiria(1957),『甘い生活』La dolce vita(1960,カンヌ国際映画祭グランプリ),『81/2』Otto e mezzo(1963),『魂のジュリエッタ』Giulietta degli Spiriti(1965),『サテリコン』Satyricon(1969),『フェリーニのアマルコルド』Amarcord(1973,アカデミー外国語映画賞),『女の都』La città delle donne(1980),『ジンジャーとフレッド』Ginger e Fred(1985),『インテルビスタ』Intervista(1987)などがある。(→イタリア映画

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