(読み)どう

精選版 日本国語大辞典 「道」の意味・読み・例文・類語

どう ダウ【道】

〘名〙
① 人や車が通行するための所。みち
② 人の従い守るべき正しいおしえ。道徳などのおしえ。みち。道理。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 学問・技芸などの、専門分野。分野それぞれのやりかた。
※中右記‐天永二年(1111)七月二九日「又検非違使志資清〈明法、博士也〉称所労由久不出仕、因之使庁之政懈怠、可被改替欠如何、人々被申云、近代道之志只一人也、且可被成副欠、且可被移他官欠」
④ 仏語。
(イ) 正しい、仏教としては代表的な実践道で、八正道のこと。
※正法眼蔵(1231‐53)画餠「根、刀、覚、道、これ一軸の画なり」
(ロ) 仏の教え。仏道、すなわち、さとり。
今昔(1120頃か)二「昔諸の人を勧めて寺を修治せしが故に、前の罪を償のひ畢て後、我に値て道を得る也」
(ハ) 仏になるための修行。
※正法眼蔵(1231‐53)別輯「平常の心これ道なりと。いわくこのこころは、よのつねのこころこれ道なりといふなり」
道教
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「サンギョウ。ミツノ ヲシエ。すなわち、ジュ、シャク、Dǒ(ダウ)。〈訳〉シャカ、ラウシ、コウシの教」
⑥ 行政上の区画
(イ) 中国で、唐時代全国を十道(のち十五道)に分けた、現在の「省」に当たる区画。明・清時代には、省の下位の区画。
寒山拾得(1916)〈森鴎外〉「支那全国が道(ダウ)に分れ、道(ダウ)が州又は郡に分れ」
(ロ) 日本の令制で、畿内のほかの諸国を大別した行政区画。すなわち、東海・東山北陸山陰山陽南海西海の七道。
※令義解(718)獄「太政官量差使人。取強明解法律。分道巡覆見囚
(ハ) 朝鮮の最上位の地方行政区画。
※朝鮮総督府地方官官制(明治四三年)(1910)一条(法令全書)「朝鮮に左の道を置く」
⑦ 都・府・県と同等の普通地方公共団体。現在は、北海道だけ。また、北海道の略。

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デジタル大辞泉 「道」の意味・読み・例文・類語

どう【道】[漢字項目]

[音]ドウ(ダウ)(呉) トウ(タウ)(漢) [訓]みち
学習漢字]2年
〈ドウ〉
みち。通路。「道中道標道路沿道街道間道軌道公道坑道国道参道車道食道水道隧道すいどう・ずいどう赤道鉄道同道歩道舗道糧道
それによって人を一定の方向に導くもの。モラルや信仰上の教え。「道学道徳道理王道求道きゅうどう求道ぐどう外道げどう権道邪道修道人道正道政道天道伝道入道非道仏道
老子・荘子を祖とする思想や教え。「道家道教道士
専門を究めて一派を立てた技芸。「華道歌道芸道剣道茶道柔道書道武道
言う。述べる。「道破唱道報道言語道断
仏教で、衆生が輪廻りんね転生する世界。「六道地獄道
行政区画の一。「山陽道北海道
「北海道」の略。「道庁
〈トウ〉2に同じ。「神道・天道様」
〈みち〉「道草道筋片道小道筋道近道山道夜道横道
[名のり]おさむ・おさめ・じ・ち・つな・つね・なおし・ね・のり・まさ・ゆき・より・わたる
[難読]説道いうならく聞道きくならく道祖土焼さいとやき道守ちもり道産子どさんこ吏道りと

み‐ち【道/路/途/径】

《「」の意》
人・車・船などが、往来するように整備された所。通路。道路。また、航路。「―を横切る」「―が混む」「船の通う―」
目的の場所に至る経路や、その途中。途上。「帰る―で土産を買う」「駅へ行く―で知人に会う」「―に迷う」
目的地までの距離。道程。行程。「町までは約二キロの―」「遠い―」
ある目的や結果に行きつく道すじ。「合格への―」「世界平和への―」「我が―を行く」
物の道理。ことわり。また、人として踏まなければならないとされる行動の筋道。道徳。「―をあやまる」「人の―に背く」「―ならぬ恋」
神仏の教え。特に、儒教・仏教などの教義。「のりの―」「仏の―を説く」
芸術・技芸などのそれぞれの分野。また、その精神真髄。「茶の―をきわめる」
ある特定の分野。専門の方面。「その―の大家」「この―一筋」
事を行うためにとるべき筋道。手だて。方法。手段。「救う―がない」
[補説]作品名別項。→
[下接句]いたちの道限りある道荊棘けいきょくの道・敷島の道善を責むるは朋友ほうゆうの道なりついの道武士もののふの道
[類語](1通り往来道路車道街路舗道ほどう街道往還通路路上路面ロードルート/(3道のり道程行程旅程/(5道徳倫理道義徳義人倫人道世道公道公徳正義規範大義仁義モラルモラリティー

どう〔ダウ〕【道】

人や車が通行する所。みち。
人として踏み行うべきみち。道理。特に、の教え。
道教。また、道教の教え。
と並ぶ地方公共団体。北海道のこと。また、「北海道」の略。→都道府県
律令制で、畿内以外の諸国を大別した行政区画。東海道山陽道など。
中国・朝鮮の地方区画。中国代には全国を10道、のち15道に区分。古代朝鮮でも行われ、現在は18道。
[類語](4

みち【道】[映画]

《原題、〈イタリア〉La strada》1954年公開のイタリア映画。フェリーニ監督の出世作として知られる。粗野な旅芸人と、無垢な女性の関係の末路を、ロータ作曲のテーマ音楽にのせて描く。第15回ベネチア国際映画祭銀獅子賞、第29回米国アカデミー賞外国語映画賞受賞。
日本画家、東山魁夷の代表作の一。一本道の風景を描いた作品で、昭和25年(1950)の日展に出品、高い評価を得た。東京国立近代美術館所蔵。

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世界大百科事典 第2版 「道」の意味・わかりやすい解説

みち【道】

道は個別に暮らす人と人,人とその作業の場所,また人の集中する幾つかの集落や町の間を,一定の線で結びつけるものである。道は人の歴史とともにあって,その時代や地域の人と人とのかかわりをおのずから示している。本項ではこうした道の歴史を日本,ヨーロッパ,中国について述べる。なお近代以降については〈道路〉の項目で,技術的な問題を含めて記したので参照されたい。また道を広義に考えればシルクロードやキャラバン・ルート(キャラバン)などの広域ルートもあげられよう。

どう【道 dào】


[中国]
 地方区画の単位の呼称。漢代,漢蛮雑居の地に県に代えて道を置いたのが起源。北魏から唐の初期までは,遠征軍の行動範囲や地方の軍管区などを道と呼んだ。唐朝は627年(貞観1),長安を中心とする交通路を軸に全国を10道に区分した。これはしだいに監察区分の性格を強め,733年(開元21)には15道に増加,各道には監察官として採訪処置使(のち観察処置使)が置かれた。安史の乱以後,国内に多くの節度使が置かれるようになったが,これは観察処置使を兼ねたので,節度使の管轄区域も道と呼ばれ,多いときは40余道を数えた。

みち【道 La strada】

1954年製作のイタリア映画。34歳のフェデリコ・フェリーニ監督が〈イタリア映画の新しい天才〉として世界に認められた名作で,神あるいは人間の救いをテーマとするフェリーニが,もっとも愛着を感じている自己表白的作品でもある。心も体も野獣のような単純で粗野な大道芸人(アンソニー・クイン)が,貧しい農家から1万リラで買った神のように純粋で痴愚な娘ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)の愛によって,〈魂の覚醒〉を知る物語を,ニーノ・ロータ作曲の哀切きわまりないメロディに乗せて描き,世界中の心をとらえた。

みち【道】

江戸時代にはおもに儒学の概念として〈道〉の語が用いられた。現代語の〈規範〉の意味に近いが,通路を意味する語義が基底にあることから,固有のニュアンスを含みこむことになる。
[二義性と用法]
 一面,道路的なものであるかぎり,道は明らかに実在するものである。だが他面,アナロジーとなって天道,地道,人道という抽象語として働く点からすれば,道の姿は直接に感知しえないものとしてある。道という言葉自体が備えているこの二重性が,奥底のところでこの概念のあり方を規定していることを見落とすべきではない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「道」の意味・わかりやすい解説


みち
La strada

イタリア映画。ポンティ・デ・ラウレンティス 1954年作品。監督フェデリコ・フェリーニ。脚本 E.フライアーノ,T.ピネリ,F.フェリーニ。撮影 O.マルテリ。音楽ニーノ・ロータ。主演アンソニー・クイン,ジュリエッタ・マシーナ。クインが演じる無知で荒々しい大道芸人と,マシーナの演じる白痴女の悲しい放浪生活を描いている。人間の獣性と神性の相克を描き,人間の魂について考察した詩的な作品といわれている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「道」の解説

道(どう)

北魏以後,軍の行動方面または軍管区を道といったが,唐は全国を10~15道にわけ,中期頃以後採訪使(観察使)を常駐させ,節度使がこれを兼ねてから,節度使の所管区域も道と呼んだ。元以後も省との間に道を置くことがあった。

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旺文社世界史事典 三訂版 「道」の解説


どう

中国の地方行政区分
唐代に置かれ,秦・漢以来の郡に代わる地方の最大区分とし,その下に州県を置いた。宋・元では路に代わったが,明では復活し,清では省の下部区分となり,形式化した。唐の影響を受けた朝鮮・日本でも,地方行政の大単位の呼称となった。

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占い用語集 「道」の解説

中国哲学上の用語の一つ。老子が関係しているらしいが定かではない。森羅万象の普遍的法則や根元的実在、道徳的な規範など、広い範囲にわたっての概念を意味する。それらは名付けることのできないものであり、礼や義などを超越した真理である。

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デジタル大辞泉プラス 「道」の解説

1954年製作のイタリア映画。原題《La strada》。フェデリコ・フェリーニ監督の代表作のひとつ。出演:ジュリエッタ・マシーナ、アンソニー・クインほか。第29回米国アカデミー賞外国語映画賞受賞。

日本のポピュラー音楽。歌は女優の島かおり。1978年発売。作詞:佐藤純弥、作曲:菊池俊輔。TBS系で放送されたドラマ「Gメン'75」の主題歌。

日本のポピュラー音楽。歌はJ-POPグループ、EXILE。作詞:Shogo Kashida、作曲:miwa furuse。2007年発売。

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百科事典マイペディア 「道」の意味・わかりやすい解説

道【どう】

都道府県

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世界大百科事典内のの言及

【郡県制】より

…唐代740年(開元28),州は328,県は1573あった。なお漢の刺史州部に相当する郡県を統轄する監察区画として唐は道(10~15),宋では路(15~23)を設けたが,元になって行省(こうしよう)ができると,それが最高の行政区画となり,その下が路,府州,県の3段階に変わった。明・清から民国時代までは省(本部18)の下で府州・県制がしかれ,明代では府140,州193,県1138を数える。…

【漂泊民】より

…例えば定住的な農業民にとって,漂泊・遍歴する人々は異人,〈まれひと〉,神であるとともに乞食であり,定住民は畏敬と侮蔑,歓待と畏怖との混合した心態をもって漂泊民に接したといわれるが,逆に漂泊・遍歴する狩猟・漁労民,遊牧民,商人等にとって,定住民の社会は旅宿の場であるとともに,交易,ときに略奪の対象でもあった。また農業民にとっては田畠等の耕地が生活の基礎であったのに対し,狩猟・漁労民,商人等にとっては山野河海,等がその生活の舞台だったのである。そしてこうした対立した立場のいずれが社会の中で支配的な比重を持つかによって,一方による他方の抑圧,賤視が生じうるが,それは時代により,また民族,地域等によってさまざまであり,固定的にとらえることはできない。…

【フェリーニ】より

…〈ネオレアリズモ〉から出て〈ネオレアリズモ〉を変革した重要な監督として知られる。彼の名は《無防備都市》(1945)をはじめとするロベルト・ロッセリーニ監督作品からピエトロ・ジェルミ監督《無法者の掟》(1949),《越境者》(1950)などに至る〈ネオレアリズモ〉の創造的な時代のシナリオライターとして早くから注目されており,〈ネオレアリズモ〉を生み出し,支えてきた重要な担い手の一人として認められていたが,その名声を世界的にした監督第5作《》(1954。アカデミー外国語映画賞を受賞した)は〈象徴的ネオレアリズモ〉とか〈抒情的ネオレアリズモ〉とよばれるほど従来の〈ネオレアリズモ〉を変えた作品であった。…

※「道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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