フェレル(その他表記)William Ferrel

改訂新版 世界大百科事典 「フェレル」の意味・わかりやすい解説

フェレル
William Ferrel
生没年:1817-91

アメリカの海洋学者,理論気象学の先駆者。ペンシルベニアに生まれ,生涯独身ですごした。家が貧しかったので農業に従事するかたわら,独学で勉強し,苦学を重ねて1844年ベサニー大学を卒業した。その後教師をしながら勉強をし,ニュートンの《プリンキピア》を読み,その影響を受け,潮汐の研究を行った。57年編暦局に入り,79年海軍の信号局(アメリカ気象局の前身)に入って86年退職した。この間,大気の運動に関する力学的な研究をすすめ,大循環や熱対流による低気圧生成などを論じた《風の話Popular Treatise on the Wind》(1886)など気象に関する数冊の著書がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェレル」の意味・わかりやすい解説

フェレル
ふぇれる
William Ferrel
(1817―1891)

アメリカの気象学者。理論気象学、大気大循環論などに貢献した。ペンシルベニア州の貧しい農家に生まれ、独学して同州のマーシャル大学に入学したが学資が続かず退学、ふた冬ほど学校の教師をして貯金したのちベサニー大学に移って卒業した。1857年、航海暦局技師となり天文や潮汐(ちょうせき)の研究などを行った。1879年に信号局に招かれ、気象学の研究に専念した。彼の研究では大気大循環論がもっともよく知られ、間接循環として生じた中緯度循環は現在フェレル循環とよばれる。また『風読本』A Popular Treatise on Winds(1889)ほかの専門的総合報告書は当時広く読まれた。

根本順吉

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェレル」の意味・わかりやすい解説

フェレル
Ferrel, William

[生]1817.1.29. ペンシルバニア,フルトンカウンティ
[没]1891.9.18. カンザス,メイウッド
アメリカ合衆国の気象学者。気象力学の開拓者。10年にわたって教師を務めたのち,1854年ナッシュビルに学校を創設。1857年アメリカ航海暦局,1867年沿岸測地調査局,1882年信号局に勤務。気流暴風雨の研究,特に地球自転が気流の方向に及ぼす影響に関する法則で知られ,『大気環流論』(1856)を発表した。また満潮,干潮を予測するための計器を発明した。『気象学研究』Meteorological Researches(3巻,1877~82)のほか,多数の著作がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android