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大気環流 タイキカンリュウ

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デジタル大辞泉の解説

たいき‐かんりゅう〔‐クワンリウ〕【大気環流】

大気大循環

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

大気環流
たいきかんりゅう

全地球的な規模の風系の集合をいう。大気大循環ともいう。大気環流を研究する学問を大気環流論といい、気象学の重要な分野をなす。大気環流論では、ある時間間隔の平均的な風系を扱う。
 一様な表面をもつ仮想的な惑星上の大気環流を惑星環流とよぶ。地球の回転、放射の緯度による違い、海陸の分布のみを考慮した大気環流を一次環流という。大気環流のなかで、移動性低気圧や高気圧の規模に対応する風系を二次環流、これらの環流に重合される小規模な風系を三次環流という。たとえば、海陸風や山谷風はこれに含まれる。大気環流はかなり古くから研究され、地表面近くの大気下層における大規模な風系は、風帯として緯度帯ごとに、貿易風帯、偏西風帯、偏東風帯、赤道無風帯(ドルドラムス)、亜熱帯無風帯(ホース・ラティチュード=馬の緯度)などが、赤道低圧帯、亜熱帯高圧帯、亜寒帯低圧帯、極高圧帯などの気圧帯や温度帯と関連して古典的に記述されている。[股野宏志]

大気環流の原動力

地球は、低緯度では太陽放射による受熱量のほうが地球放射による放熱量より大きく、高緯度では放熱量のほうが受熱量より大きい。このため、赤道地方を熱源、極地方を冷源とする熱機関が構成され、大気環流の原動力となっている。すなわち、低緯度地方と高緯度地方とでは、地表面による大気の加熱量が異なるため、赤道で熱せられた大気は上昇して上層で極向きに流れ、極で冷やされた空気は沈降して下層で赤道向きに流れ、大気は赤道と極の間で大規模な熱対流を形成する。しかし、大気は地球の回転に引きずられ、地軸の周りを西から東に回転する流体殻を構成しているので、熱対流による南北方向の環流と、回転による東西方向の環流が重合して、複雑な環流系を形成する。環流の形態について、暖かい所で上昇し冷たい所で下降する環流を直接環流、冷たい所で上昇し暖かい所で下降する環流を間接環流という。したがって、大気の環流系は、高緯度地方と低緯度地方では熱的原因による直接環流、中緯度地方では力学的原因による間接環流という三つの細胞を形成するものと考えられた。これは非常に単純明快で、教科書的な大気環流モデルを提供した。しかし、ジェット気流が発見され、これについての研究が進むにつれ、間接環流の力学的特性と強い西風であるジェット気流の力学的特性とは相いれないものとなり、単純な3細胞説は説得力を失った。
 赤道地方と極地方における受熱量の不均衡のため、地表面による大気の加熱量が異なることから、赤道と極の間の大気には温度傾度が形成される。そして、この温度傾度に対応する温度風が地衡風的な平衡状態にある東西方向の流れ(帯状流)として卓越するようになる。鉛直方向の風速差がある程度に達すると、この帯状風は不安定化し、傾圧不安定(大気安定度における動力学的不安定の一つ)による擾乱(じょうらん)が発達し、帯状風の波動化が進んで、偏西風は蛇行する。蛇行部分では、北の冷たい空気が沈降し、南の暖かい空気が上昇し、これによって位置のエネルギーは擾乱の運動エネルギーに転化する。この過程で熱の南北交換が行われることになる。[股野宏志]

大気環流の研究手法

大気環流の研究において、従来は、実験室内で模型実験による大気環流の再現が試みられたが、1960年代以降は、数値シミュレーション(数値実験)による研究が主流となった。これは、いろいろのパラメーターや雲の分布、地表面の状態、物理過程の表現をかえて、それらが大気環流に及ぼす効果を調べようとするものである。たとえば、ヒマラヤ山系がないとした場合の結果によると、冬のシベリア高気圧は発達せず移動性高気圧として通過することがわかり、このことから、冬のシベリア高気圧の形成と発達、ひいては日本の典型的な冬の気象学的特徴に、ヒマラヤ山系が重要な役割を果たしていることが立証された。
 また、世界気象機関(WMO)が世界気象監視(WWW)計画の一環として1970年代から展開を始めた静止気象衛星による観測網は、1994年にロシアがインド洋上に打ち上げてようやく当初の計画どおり整備されることとなった。こうして東(西)経0度(METEOSAT(メテオサット):ヨーロッパ気象衛星機構)、東経76度(GOMS(ゴムス):ロシア)、東経140度(ひまわり:日本)、西経135度、西経75度(ともにGOES(ゴーズ):アメリカ)と赤道上空に並ぶ5個の静止気象衛星による全地球的な観測網が完備するとともに、その観測資料の数値的利用が容易になったことから、大気環流の研究は飛躍的に促進された。しかし、高度約80キロメートルまでのいわゆる気象的な大気全体を含む環流論や大気と海洋の相互作用を含む環流論には未知の領域が大きく広がっており、21世紀における研究の飛躍的な発展が期待される。[股野宏志]
『毛利圭太郎・松本誠一著『大気大循環』(1956・地人書院) ▽新田尚著『大気大循環論』(1980・東京堂出版) ▽廣田勇著『大気大循環と気候』(1981・東京大学出版会) ▽岸保勘三郎・浅井富雄編『大気科学講座4 大気の大循環』(1982・東京大学出版会) ▽時岡達志・山岬正紀・佐藤信夫著『気象の数値シミュレーション』(1993・東京大学出版会) ▽山崎道夫・広岡俊彦編『気象と環境の科学――天気予報の科学からエル・ニーニョまで』(1993・養賢堂)』

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