フォンビージン(英語表記)Denis Ivanovich Fonvizin

デジタル大辞泉 「フォンビージン」の意味・読み・例文・類語

フォンビージン(Denis Ivanovich Fonvizin)

[1744~1792]ロシア劇作家上流社会や農奴制下の地主階級を風刺した写実的な作品発表喜劇旅団長」「親がかり」など。

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精選版 日本国語大辞典 「フォンビージン」の意味・読み・例文・類語

フォンビージン

  1. ( Djenis Ivanovič Fonvizin デニス=イワノビチ━ ) ロシアの劇作家。ロシア上層社会や農奴制下の地主たちの旧弊無知を風刺した写実的な喜劇を発表。ロシア近代演劇に大きな影響を与えた。代表作「旅団長」「親がかり」。(一七四四‐九二

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改訂新版 世界大百科事典 「フォンビージン」の意味・わかりやすい解説

フォンビージン
Denis Ivanovich Fonvizin
生没年:1744-92

ロシアの劇作家。1762年モスクワ大学を中退して外務省に入り,以後20年間役人生活を送った。69年からは外交の責任者N.パーニンの秘書としてポーランド分割などに手腕を発揮した。学生時代から文学に関心をもち,デンマークの作家ホルベアやドイツ,フランスの作家の作品を翻訳した。60年代半ばに一時帝室劇場を管理する職務についたころから演劇に対して興味をいだき,公務のかたわらいずれも5幕の喜劇《旅団長》(1770),《親がかり》(1782)を発表した。前者は旅団長一家と参事官夫妻の間の恋のもつれを筋立てとし,上流社会のフランスかぶれを風刺するとともに,官吏の腐敗ぶりを暴露したもの。後者は富裕な孤児をめぐる田舎地主の家庭内の争いを描きつつ,地主階層の無知蒙昧(もうまい)と強欲をするどく指摘している。とくに《親がかり》は非常な成功を収めたので,甘やかされた愚昧な青年ミトロファンをはじめ主要な登場人物の名前は,それぞれのタイプを示す普通名詞として,今日も使われている。退職後まもない83年には戯文《宮廷一般文法》を著して,啓蒙君主を気取るエカチェリナ2世とその寵臣たちを痛烈に批判した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォンビージン」の意味・わかりやすい解説

フォンビージン
ふぉんびーじん
Денис Иванович Фонвизин/Denis Ivanovich Fonvizin
(1744―1792)

ロシアの劇作家。1762年にモスクワ大学を中退してすぐに役人勤めを始め、以後20年間外務省や宮内省で勤務した。69年からは外務大臣パーニンの秘書官としてポーランド分割などで活躍した。早くから文学に関心を寄せ、デンマークの作家ホルベアやドイツ、フランスの作家の作品を翻訳するとともに、寓話(ぐうわ)詩や風刺詩を書く。60年代の中ごろに一時帝室劇場を管理する職務についたころから演劇に興味をもつようになり、公務のかたわらに、いずれも五幕からなる喜劇『旅団長』(1770)、『親がかり』(1782)を発表。前者は旅団長一家と退職した参事官夫妻の間の恋愛関係のもつれを筋として、当時の上流社会の間で顕著な現象となっていたフランスかぶれを風刺し、同時に官吏の腐敗ぶりを暴露したもの。後者は遺産を相続して突如として富裕になった孤児をめぐり、田舎(いなか)地主の家庭内の争いや、地主階級の無知ぶりを鋭く指摘している。とりわけ『親がかり』は非常な成功を収めたので、甘やかされたばか息子ミトロファンをはじめ主要な登場人物の名前は、それぞれのタイプを示す普通名詞になっている。社会批判はその後も衰えず、83年には『宮廷一般文法』を著して、啓蒙(けいもう)君主を気どるエカチェリーナ2世やその寵臣(ちょうしん)たちを痛烈に皮肉ったり、雑誌誌上で女帝と衝突したりした。

[中村喜和]

『除村ヤエ訳『親がかり』(『ロシア文学全集35 古典文学集』所収・1959・修道社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フォンビージン」の意味・わかりやすい解説

フォンビージン
Fonvizin, Denis Ivanovich

[生]1744/1745.4.14. モスクワ
[没]1792.12.12. ペテルブルグ
ロシアの作家。貴族の出身で初め風刺的な寓話を多く書き,農奴制社会を批判したが,その後劇作に向い,喜劇『旅団長』 Brigadir (1768~69) や『親がかり』において,フランス文化に盲従する貴族社会の無知,堕落の様相を皮肉った。のちに自由思想家としてエカテリーナ2世の逆鱗に触れ不遇な晩年をおくった。

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百科事典マイペディア 「フォンビージン」の意味・わかりやすい解説

フォンビージン

ロシアの作家。エカチェリナ2世治下の貴族社会を風刺したロシア写実劇の創始者の一人。喜劇《旅団長》(1769年),《親がかり》(1782年)が代表作。

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