フクラスズメ(その他表記)Arcte coerulea

改訂新版 世界大百科事典 「フクラスズメ」の意味・わかりやすい解説

フクラスズメ
Arcte coerulea

鱗翅目ヤガ科の昆虫。大型のガで,開張約8cm。太い体軀(たいく)とその姿態からフクラスズメと呼ばれるが,スズメガ科ではない。前翅黒褐色後翅には青色の紋を有する。幼虫黒色と黄色の鮮やかな縞模様で赤色を混じ長毛を生ずる。路傍カラムシヤブマオなどイラクサ科の植物につき,人目を引くが,有毒ではない。少なくとも年2回羽化し,成虫で越冬するため農家の納屋の屋根裏などに潜んでいることがある。インド東南アジアなどに広く分布し,日本では本土の各地にふつうであるが,南西諸島には分布しないようである。近縁の数種はアジアの熱帯にすむ。いずれも雄の腹節背面に裸出したやすり状の発音器様の構造を有するが,その機能については十分調べられていない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクラスズメ」の意味・わかりやすい解説

フクラスズメ
ふくらすずめ / 脹雀蛾
脹天蛾
[学] Arcte coerulea

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属するガ。体は太くて扁平(へんぺい)。はねの開張80ミリメートル内外の大形種。体とはねはともに褐色を帯びた黒色で、後翅には青色帯と同じ色の横脈紋があり、前翅に青色鱗を散布する。ほとんど日本全土のほか、隣接大陸、東南アジアからオーストラリアにかけて広く分布する。年2化で、成虫態で越冬する。晩秋になると、人家の戸袋や台所の隅の暗所で翌春まで潜んでいることがあるが、暖房で温度が上昇すると、部屋の中を活発に飛ぶ。幼虫はカラムシ、ヤブマオ、コウゾなどの葉を食べる。

[井上 寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フクラスズメ」の意味・わかりやすい解説

フクラスズメ
Arcte coerulea

鱗翅目ヤガ科のガ。前翅長 33~39mm。体は太く,暗褐色の鱗粉におおわれる。前翅は暗褐色地に雲状の黒色斑があり,後翅は黒褐色地に美しい灰青色紋がある。成虫は夕方群飛することがある。成虫で越冬し,低温でも活動することがある。幼虫はイラクサ,カラムシなどの葉を食べる。日本全土,台湾,朝鮮,アムール,中国,東南アジアからインドにかけて広く分布する。

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小学館の図鑑NEO[新版]昆虫 「フクラスズメ」の解説

フクラスズメ
学名:Arcte coerulea

種名 / フクラスズメ
目名科名 / チョウ目|ヤガ科
解説 / 成虫で越冬します。
体の大きさ / (前ばねの長さ)34~40mm
分布 / 北海道~南西諸島
成虫出現期 / 7~8月、10月
幼虫の食べ物 / カラムシ、コアカソなど

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百科事典マイペディア 「フクラスズメ」の意味・わかりやすい解説

フクラスズメ

鱗翅(りんし)目ヤガ科のガの1種。日本全土,朝鮮,中国,台湾〜インドに分布。開張70mm内外,前翅は黒褐色で不規則な斑紋があり,後翅は黒色で青い帯紋がある。成虫は年1回8〜9月に出現,成虫で越冬する。幼虫はマオ,イラクサ類を食べる。

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