物を収めておくため,独立して作られた建物。同じ性格の建物には倉と物置があるが,倉が物を長期にわたって保存格納する性格であるのに対して,納屋はある行事や作業に必要な道具を格納し,ときには作業場として使われることもある。また,物置は雑多な物を入れておく建物であるのに対し,納屋は使用目的がしぼられた物を収納する。また〈納屋〉の語は商品流通の歴史にかかわってさまざまな意味で用いられてきた。
(1)農家の納屋は農耕具,脱穀の用具,筵(むしろ)など農作業に必要な器物を収納している。日本の農家に納屋が普及したのは江戸時代の中期以降で,現存する建物もあまり古いものはない。江戸中期以前は,主屋の土間が納屋の役割を果たしていたと思われ,土間は床上の部分と同じ広さにとられる。江戸中期以後,土間の面積は縮小し,主屋面積の3分の1くらいになるが,その時期が農家に納屋が普及した時期に見合っているものと考えられる。
執筆者:鈴木 充(2)室町時代,港町に設けられた海産物などを収蔵するための倉庫をいう。堺では貿易品を扱う有力商人がこれを所有し,品物の保管をおこない,他人の商品をも預かった。そのため彼らを納屋衆という。江戸時代でも河岸(かし)に建てられた商業用倉庫を納屋といった。ここから転じて,商品のうち,大名らの荷物で蔵屋敷を経由して取引きされる商品を蔵物というのに対して,商人が生産者や生産地商人との取引きで流通させる商品を納屋物とよんだ。
(3)高級倉庫に対し,簡単で小さな倉庫をいう。漁村では漁具などを格納し,魚を入れたり,宿泊場所ともなった。また都市でも屋外にある物置小屋をいった。
(4)魚問屋,魚屋をいう。大津では水産物を扱う問屋をいい,鹿児島でも魚屋をさすところや魚市場をさすところがあった。
→倉
執筆者:脇田 修
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…他方,軍団や農場の倉庫や穀倉は,一室の独立した建物を建てるか,建物内の通例の室をあてることが多かった。 西欧中世の倉庫は,ローマの軍団や農場の倉庫の系統を受けつぐもので,そのほかに教会への十分の一税としての農産物を収納する納屋tithe barnが教区に一つ建てられるのが通例であった。中世後期からルネサンスの都市国家では,しばしば武器庫が公共の倉庫として建てられた。…
…かつては鉱山業,林業,その他でも広く見いだすことができた。九州の炭鉱等で納屋,沖仲仕では権造部屋と呼ばれたものは,細部で若干の差異はあっても,本質的には同性質のものである。機能は大きく分けて労働力募集,作業監督,生活管理の三つが含まれ,事業主が労働面には直接タッチすることなく,一定の契約ですべてを飯場頭に一任する。…
※「納屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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