フランス銀行(読み)ふらんすぎんこう(英語表記)Banque de France フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フランス銀行」の意味・わかりやすい解説

フランス銀行
ふらんすぎんこう
Banque de France フランス語

フランス中央銀行。1800年2月13日、共和国第一統領ナポレオンの指示によりパリに創設された。無期限の存続特許をもち、資本金3000万フラン、株式3万株からなる株式組織民間銀行であったが、1806年には総裁副総裁大蔵大臣による任命制となり、公的な性格が強くなった。1803年に銀行券発行の独占権を得たが、発行独占がパリからフランス全土に及ぶのは、1848年の二月革命後、九つの地方発券銀行を吸収合併して地方支店としてからである。その後支店網の拡充を図り、19世紀末までには中央銀行としての組織を整えるに至った。フランス銀行の発券制度は、当初は最高発行額制限制度をとっていたが、1928年6月の貨幣法制定により比例準備制度となった。1930年代の大不況期には、金ブロックの中心として最後まで金本位制度維持に努めた。

 第二次世界大戦後、1945年12月に制定された銀行法に基づいてフランス銀行は国有化され、株式は政府所有となった。理事会は、総裁と2名の副総裁、12名の理事で構成されている。フランス銀行は、銀行券の発行のほか、国庫の出納事務や国債事務を取り扱うとともに、政府に対する貸付を行う。また、手形の再割引や貸付を通じて民間にも資金を供与し、その際の公定歩合の変更や、公開市場操作などによって金融政策を遂行している。

 一般に、1999年にヨーロッパ単一通貨ユーロが誕生して以来、ユーロ圏における中央銀行の機能や業務はヨーロッパ中央銀行(ECB:European Central Bank)が一元的に行っていると考えられがちであるが、実際にはそうではない。ECBのみならず、加盟各国の中央銀行をあわせた集合体として構成されるヨーロッパ中央銀行制度(ESCB:European System of Central Banks)が、組織としてユーロ圏における中央銀行制度をなしているのであり、ECBと各国中央銀行の間に組織的な上下関係、ないしは主従関係は認められない。つまり、ESCBを通じて単一の金融政策として行われ、各国中央銀行は、定められた金融政策方針に従って、各国内で金融政策を実施することを任務とすることになっている。したがって、フランスにおける金融政策の実施はフランス銀行が現在も引き続いて行っている。

[土方 保・前田拓生 2016年3月18日]

『H・ジェルマン・マルタン著、塩野谷九十九・大月高訳『フランス』(B・H・ベックハルト編『各国銀行制度概説 上巻』所収・1956・中部経済新聞社)』『町田義一郎著『フランスの金融制度』(高垣寅次郎監修『世界各国の金融制度 第1巻』所収・1964・大蔵財務協会)』『河村小百合「欧州債務問題長期化のからくり――欧州中央銀行制度による「隠れた救済メカニズム」と急膨張する各国の負担」(『JRIレビュー 2012』Vol.1, No.1所収・2012・日本総研)』『Gabriel RamonHistoire de la Banque de France d'Après les Sources originales (1929, Bernard Grasset, Paris)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フランス銀行」の意味・わかりやすい解説

フランス銀行
フランスぎんこう
Banque de France(仏)

フランスの中央銀行。 1800年,ナポレオン治世下に民間銀行として創設され,06年に公的な銀行となった。一貫して慎重な経済政策をとっていたが,EC市場統合に当たっては,積極的に統合を推進する方向に転換している。

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