16世紀から18世紀における器楽曲の一形式。フーガの前駆的な形式の一つで,厳格な対位法的な書法を特徴とする。16世紀の中ごろからモテットの手法を器楽に取り入れる形で発展し,やがて,G.ガブリエリやA.ガブリエリらのベネチア楽派の手で器楽固有の形式として整備されていった。この形式をとくに鍵盤楽器の主要形式へと高めたのはフレスコバルディであり,主題の拡大や縮小,また一つの声部が主題を奏し終わらないうちに他の声部がたたみ込むよう重なっていくストレットを伴ういっそう高度な技法を開拓した。やがてその手法はフローベルガーをはじめとする彼のドイツ人の弟子たちの手でドイツにもたらされ,形式の調的対立感,変化に富んだ主題作法などの作曲法をとるフーガへと形を変える。J.S.バッハも《平均律クラビーア曲集》において意図的にリチェルカーレ風の作品を書いているほか,《音楽の捧げもの》に6声のリチェルカーレを作曲している。なお16~17世紀の練習曲や変奏曲などの器楽曲で,決まった形式をもたない即興曲風の非模倣的な作品にこの名をもつものもある。
執筆者:西原 稔
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16~17世紀のさまざまな型の器楽曲。「探索する」という意味のイタリア語動詞に由来し、この呼称で指示されるものも一律に規定しがたいが、もっとも重要なものはフーガの先行形態をなす模倣的器楽形式である。16世紀中葉に書かれた初期のリチェルカーレは、ルネサンス期の声楽モテットを器楽に移した様式を示し、多くの場合合奏用であった。しかし鍵盤(けんばん)楽器用の曲では声楽様式からの脱皮がくふうされ、16世紀後半のアンドレア・ガブリエリの作品で複数の主題をもつ模倣的リチェルカーレの定型が確立した。17世紀のフレスコバルディは単一主題に基づく様式を確立し、各部分を変奏で有機的に関連づけた。この単主題リチェルカーレは、その後技法的発展を示しつつしだいにフーガへ移行した。
[寺本まり子]
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