フードマイレージ(読み)ふーどまいれーじ(その他表記)food-mileage

デジタル大辞泉 「フードマイレージ」の意味・読み・例文・類語

フード‐マイレージ(food mileage)

食料が消費者に届くまでに輸送される距離数字で表したもの。食料輸入量に輸出入国首都間の距離を掛けたものを輸入国別に算出・集計して表す。単位はトン・キロメートル。農産物の輸送による環境負荷を計る指標の一つとして、英国の消費者運動家ティム=ラングが1994年に提唱。環境負荷を軽減するためには、食料自給率を上げることや地産地消実践が重要とされる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フードマイレージ」の意味・わかりやすい解説

フード・マイレージ
ふーどまいれーじ
food-mileage

1990年代のイギリスにおける「フード・マイルズFood Miles運動」を参考に日本で開発された指標。フード・マイルズ運動とは、なるべく身近でとれた食料を消費することによって食料輸送に伴う環境負荷を低減させていこうとする市民運動で、現在は距離だけではなくエシカル(倫理的)などの観点を含むより幅広い運動に発展している。

 フード・マイレージの計算方法は、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせるという単純なものであるが、これに二酸化炭素(CO2)排出係数を乗じることによって、食料の輸送に伴う環境負荷の大きさ(二酸化炭素排出量)を定量的に把握できるという利点がある。

 2020年(令和2)における日本の輸入食料のフード・マイレージは約9000億トンキロメートル(t・km)である。2001年(平成13)時点でも日本は同水準であるが、これを諸外国の数値と比較すると韓国・アメリカの約3倍、イギリス・ドイツの約5倍、フランスの約9倍と、日本は際だって大きい。

 日本の輸入食料のフード・マイレージは、高度経済成長期の1960年(昭和35)と比べて、主要4品目(コムギトウモロコシダイズナタネ)では5倍以上へと増大している。品目別にみると飼料穀物(トウモロコシなど)や油糧種子(ダイズ、ナタネなど)が大きな部分を占めているが、これは、日本人の食生活が大きく変貌(へんぼう)したこと(コメ消費の大幅減、畜産物・油脂消費の大幅増)を反映したものである。

 また、フード・マイレージに輸送手段ごとの二酸化炭素排出係数を掛け合わせて累計すると、輸入食料が日本の港に到着するまでに約1700万トンの二酸化炭素が排出されていると試算される(2001年。冷蔵などによる排出量を除く)。これは1世帯当りでは約372キログラムとなり、年間を通じてエアコンの設定温度を調整する取り組みによる二酸化炭素削減量の約9倍、1日1時間テレビ利用を減らす取り組みに比べると約30倍に相当する。

 食料輸送に伴う環境負荷を低減するためには、国産品を選択することや地産地消が有効である。この効果は、フード・マイレージを用いると簡単に定量的に把握できる。ただし、食料の生産から消費・廃棄までのライフサイクル全体のなかでは、輸送にかかわる二酸化炭素排出量は5~10%に過ぎない。食生活における環境負荷の低減を図っていくためには、化学肥料・農薬を使用せずに生産された有機農産物や旬(しゅん)のものを選択する、食べ残しをしないなどの行動変容が重要である。

 以上のように、フード・マイレージは自らの食の選択が地球環境ともかかわっていることに「気づく」きっかけとなる指標であるが、さらに、フード・マイレージを意識することは、食卓に並べられた食べ物が、どこで、どのような人々によって生産されているかを想像する「よすが」ともなる。とくに農村から遠く離れてしまった都会に住む多くの消費者にとって、食料生産の現場である農業・農村の現状を理解する一助となることが期待される。

[中田哲也 2025年8月19日]

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