気候変動や自然破壊、人権侵害、貧困や格差、地域の衰退などの社会問題に配慮し、その解決につなげたり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら行う消費活動のこと。児童労働や人権侵害のない製品、環境配慮などに関する認証を取得した商品、地産地消の農作物などのほか、動物福祉に配慮した衣服や食品など対象となる製品は多い。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
地球環境や社会貢献などに配慮したモノやサービスを積極的に消費する行動。自分の欲求だけによる消費ではないため、「倫理的な」という意味の英語の形容詞エシカルをつけたことばである。国の消費者基本計画はエシカル消費を「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮して消費者が自ら考える賢い消費行動」とし、消費者庁は「消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」と定義している。自然保護や省資源に役だてようとする「エコ消費」、健康で持続的な社会を目ざす生活スタイル「ロハス」、開発途上国から搾取することなく、商品を適正価格で購入する「フェアトレード」、社会的弱者の支援につながる「チャリティー消費」、地域活性化の一助となる「地産地消」などを包括するマーケット用語である。環境や人権に配慮しない企業の商品を排除(ボイコット)するという回避行動もエシカル消費に含まれる。また、エコバッグを持って買い物に出掛ける行動も、広義のエシカル消費の一つとされる。
1990年代後半にイギリスで発達した概念で、イギリスのNPO(民間非営利組織)団体のECRA(Ethical Consumer Research Association)は、世界の著名企業を環境保護や社会的貢献度に基づいて、エシカル消費の度合いをランク付けしている。日本では2007年(平成19)、輸入ミネラルウォーター販売会社が売上高の一部をユニセフ(国連児童基金)へ寄付するキャンペーンを展開したことで、エシカル消費の概念が広まった。2011年の東日本大震災後、ボランティア活動を組み込んだ旅行商品や、義援金付き預貯金などのエシカル商品が次々と登場した。消費者庁の調査では、エシカル消費を「これからの時代に必要」とする回答が2016年の29.3%から2020年(令和2)には51.8%に上昇した。
環境や人権保護に積極的な企業に投資するファンドをエシカルファンドとよぶ。イギリスの2021年のエシカル消費の市場規模(エシカルファンドを含む)は19兆円に達したと推定され、環境保護や社会貢献機運の高まりで、世界のエシカル消費市場は拡大しているとされる。しかし、倫理性の概念は個人、地域、国、宗教などによって異なるため、エシカル消費の定義はあいまいで、価値観の押し付けにつながりかねないとの指摘もある。
[矢野 武 2022年5月20日]
(大迫秀樹 フリー編集者/2017年)
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