日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブック・クラブ」の意味・わかりやすい解説
ブック・クラブ
ぶっくくらぶ
book club
会員制のもとで書籍を市価より安く(通常20~25%引き)通信販売する組織。1919年ドイツで古典文学の復刻版の配布を意図して発足した「本の友の会」Volksverband der Bücherfreundeが、ブック・クラブの起源とされている。しかし、大衆向けの大規模なブック・クラブの草分けは、1926年にアメリカで誕生したブック・オブ・ザ・マンス・クラブBook-of-the-Month Club(BOMC)である。少ない書店数や比較的安い書籍郵送料などによって、同クラブに続いて数多くのブック・クラブがアメリカで生まれ、80年代の初め、その数は200余りに達した。1990年代以降、アメリカでは超大型書店が台頭し、90年代なかばにはインターネットを利用して書籍販売を手がけるオンライン書店(ウェブ書店)が出現した。両者はともに表示価格(リストプライスlist price)の20~40%引きという新刊書の割引き販売を実施し、「低廉価格での書籍提供」を売りものとする既存のブック・クラブ経営に打撃を与える結果となった。ブック・クラブ側では、対策として、ウェブサイトを立ち上げて新会員を募集し、ブック・クラブの宣伝・販売促進活動を積極的に展開するに至った。その企業努力が結実して、アメリカのブック・クラブ全体の1999年の年間売上高は前年比3.7%増の12億5000万ドル、売上げ冊数は1億4000万冊を記録した。
ドイツ、イギリス、フランス、および北欧3か国においてもブック・クラブが存在しているが、BOMCとともに世界的な二大ブック・クラブの一つであった、ダブルデイ・ダイレクトDoubleday Directは、ドイツの大手出版コングロマリット企業ベルテルスマンBertelsmannの傘下に属し、リテラリー・ギルドThe Literary Guildをはじめとする30余りのブック・クラブを擁し、会員数480万人、年間推定売上高は2億8000万ドル(1998)に及んだ。一方のBOMCは、アメリカの出版メディア企業タイムTime Inc.の傘下に属し、クラブ数9、会員数450万人、年間推定売上高は同じく2億8000万ドル(1998)であったが、これら両クラブは経営安定化を意図して、2000年なかばに合併し、ブックスパンBookspanが誕生した。
日本においては、書店数が多い、新刊書の割引販売が禁じられている、などの事情によって西欧方式のブック・クラブは存在していない。1969年(昭和44)に、潜在読者の開発、埋もれた良書の発掘を目的として、出版界の共同出資で「全日本ブッククラブ」が設立されたが、十分な会員数を獲得できないまま73年に解散した。
[金平聖之助]