ブフナー(読み)ぶふなー(英語表記)Eduard Buchner

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブフナー」の意味・わかりやすい解説

ブフナー
ぶふなー
Eduard Buchner
(1860―1917)

ドイツの生化学者。ミュンヘン生まれ。ミュンヘン、エルランゲン両大学で学び、ベルリンブレスラウ、ウュルツブルク各大学の教授歴任した。第一次世界大戦に従軍し、戦傷を受け、ルーマニアで死去した。彼は細菌学者である兄ハンスHans Buchner(1850―1902)に刺激され、酵母細胞をすりつぶして絞り汁をつくり、これに糖を加えたところ、発酵がおこってアルコールが生成されることを確かめた(1897)。パスツール以来、生命なしには発酵はないと考えられていたのが、この実験によって、生きている細胞なしにも発酵がおこることが明らかになり、今日の生化学や分子生物学の基礎が築かれた。この業績により1907年にノーベル化学賞を、それまでの最年少の46歳で受賞した。彼は酵母の無細胞抽出液中にある発酵の要素をチマーゼと命名したが、これは単一な酵素ではなく、多くの酵素の混合物である。

[宇佐美正一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブフナー」の意味・わかりやすい解説

ブフナー
Buchner, Eduard

[生]1860.5.20. ミュンヘン
[没]1917.8.13. ルーマニア
ドイツの生化学者。ミュンヘン,エルランゲン各大学に学び,A.バイヤーに師事し,1888年に学位取得。有機合成化学を研究する一方,K.ネーゲリの影響を受けて発酵現象に関心をいだく。テュービンゲン大学 (1896) ,ベルリン農科大学 (98) ,ブレスラウ大学 (1909) ,ウュルツブルク大学 (11) 教授を歴任。酵母の存在によって発酵が起ることに関して,それが,生きた酵母細胞に特有の現象であるという解釈と,酵母の体内に含まれる特定の物質による化学反応であるとする考え方の両方がその頃まで並存していた。 96年ブフナーは酵母をすりつぶして細胞構造を破壊してもなお発酵作用が失われないことを見つけ,発酵が化学反応であることを立証した。さらにその中から,発酵を行う因子を抽出し,その化学的性質を調べて,それが蛋白質であることを推定した。これら一連の努力の結果,発酵現象を化学的に研究する道が開け,ここに発酵化学という新しい学問領域が成立した。 1907年ノーベル化学賞を受賞した。

ブフナー
Buchner, Hans Ernst Angass

[生]1850.12.16. ミュンヘン
[没]1902.4.5. ミュンヘン
ドイツの細菌学者,免疫学者。 E.ブフナーの兄。 1875年軍医となり,94年ミュンヘン衛生研究所所長。体液免疫説を提唱し,伝染病を経過すると細胞は変化を起して,再感染に反応しなくなると主張した。また先天性免疫本態として,血清中の殺菌性物質を指摘し,アレキシン alexin (今日,補体 complementといわれるもの) と命名した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android