ブランケンブルク(読み)ぶらんけんぶるく(英語表記)Friedrich von Blankenburg

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブランケンブルク」の意味・わかりやすい解説

ブランケンブルク(Wolfgang Blankenburg)
ぶらんけんぶるく
Wolfgang Blankenburg
(1928―2002)

ドイツ精神病理学者。代表的な現象学的精神病理学者の一人。ブレーメンに生まれ、1947年フライブルク大学文学部に入学。ハイデッガーらに師事して哲学を学んだ後に医学部に移り、精神医学に転じた。1968年ハイデルベルク大学に移り、ヤスパース、クルト・シュナイダーKurt Schneider(1887―1967)の流れをくむハイデルベルク学派の精神病理学の伝統を受け継ぎ、1979年からはマールブルク大学精神科教授を務めた。

 ビンスバンガーの現存在分析を継承して、哲学的素養を生かしてより積極的にフッサールの現象学やハイデッガーの存在論を取り込んだブランケンブルクは、統合失調症を中心とする現象学的研究のリーダー格として活躍した。それまでの研究が陽性症状妄想幻覚のこと。自我障害)に重きをおくものであったのに対して、代表作『自明性の喪失Der Verlust der natürlichen Selbstverständlichkeit(1971)において、スイスの精神病理学者ビュルシュJakob Wyrsch(1892―1980)にならって単純型(症状の少ない)統合失調症を対象とし、「自分にはあたりまえのこと(自明性)が欠けている」と悩む患者の内省のなかに、統合失調症の基礎障害を正確に描出しようとした。

 世界との関係、時間の成立(時熟)、自己の成立(自立)、他者との関係(間主観性)といった各方面からのアプローチは精緻(せいち)を極め、患者が「慣れ親しんだ世界」からいかに疎外されているかを「超越論的構成」(フッサール)の不全として描いて余すところがない。彼の業績早くから木村敏(きむらびん)によって日本に紹介され、1970年代の精神病理学のベル・エポックの花形として、とくに日本では大きな影響力をもった。

[大饗広之]

『木村敏・岡本進・島弘嗣訳『自明性の喪失――分裂病の現象学』(1978・みすず書房)』


ブランケンブルク(Friedrich von Blankenburg)
ぶらんけんぶるく
Friedrich von Blankenburg
(1744―1796)

ドイツの美学者。ポメルン地方の貴族の出。ズルツァーの美学論の影響を受け、ドイツ小説論の展開を基礎づけた。その著『小説試論』(1774)で、小説に劇の対話形式を取り入れる新たな手法の可能性を説く。ゲーテ書簡体小説『若きウェルテルの悩み』が世に出るや、『ウェルテル論』(1775)を執筆、一個の人間の内面史を演劇的手法で描いた、完成の極致を示す作品として高く評価した。

[新保弼彬]

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