ブリンナー(その他表記)Brynner, Yul

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブリンナー」の意味・わかりやすい解説

ブリンナー
Brynner, Yul

[生]1920?.7.11. 極東共和国ウラジオストク
[没]1985.10.10. アメリカ合衆国ニューヨーク,ニューヨーク
ロシア生まれのアメリカ合衆国の舞台・映画俳優。本名 Yuliy Borisovich Bryner。ミュージカル王様と私』The King and Iのシャム(タイ)王役で名をなし,1951~85年にブロードウェーで 4500回以上の公演を行なった。ブリンナーは話を誇張したり,つくり話をしたりする傾向があり,そのせいで彼の生い立ちについては不確実な情報が多く,ブリンナーによると,出生地はサハリン島,父はモンゴル人で,母はルーマニア系のロマであった。しかし 1989年に息子が出版した伝記で,生まれは当時極東共和国だったウラジオストク,父はロシア人とスイス人の血を引く技術者,母はロシア人であったことが明らかになった。幼い頃に父が家を出て,その後中国,フランスに移り住み,10代でナイトクラブの歌手,さらに空中ぶらんこ乗りとなった。1940年代初めにアメリカに渡って巡業劇団の役者となり,1941年にはウィリアム・シェークスピアの『十二夜』でブロードウェーデビューを果たした。ブロードウェーでは"Lute Song"(1946)で主役東洋王子に扮するなど,いくつかの作品に出演し,1949~53年にはテレビ番組のディレクターとしても活躍した。あたり役となったリチャード・ロジャーズ&オスカー・ハマースタイン2世のミュージカル『王様と私』のシャム王モンクット(→ラーマ4世)役では,響き渡る声やカリスマ性,坊主頭が評判となった。1951~54年に1246回の公演をこなし,1956年の映画版(デボラ・カー共演)ではアカデミー賞の主演男優賞を受賞した。その後も公演を続け,1985年の 4625回目となる最後の舞台でもシャム王役を務めた。大作映画でも主演し,セシル・B.デミル監督の『十戒』The Ten Commandments(1956)ではエジプト王ラムセス2世に,『追想』Anastasia(1956)では策謀者のロシアの元将軍に,『カラマゾフの兄弟』The Brothers Karamazov(1958)では長兄ドミートリー,『荒野の七人』The Magnificent Seven(1960)ではリーダー各のガンマンに扮した。1970年代以降は SFスリラー映画『ウエストワールド』Westworldのロボットガンマン役で強い印象を残した。写真家としても著名で,1960年にみずからの写真作品を盛り込んだ著作"Bring Forth the Children: A Journey to the Forgotten People of Europe and the Middle East"を発表した。また料理本も発行している。1960年代,スイスに居住していたブリンナーはアメリカの市民権を放棄した。

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